疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

愛しさ故 5

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ドアを閉め、ヘタンとその場に座り込んだ私の耳に壁越しに声がする。
『ねぇ、今音がしたけど……』
『あぁ、姉さんだろ。今日は帰ってくるのが早かったな』
(早く帰ってきて悪かったわね)
壁から聞こえてくる司の声に心の中で悪態をついた。
『じゃ、帰らないと……』
『そうだな……ココの部屋の壁は薄くて丸聞こえのはずだし……気持ちイイ声が聞こえたらまずいもんな』
『やだ司君ったら……ぁん……や、やめるんでしょ?』
『最後の一舐めだよ』
『あはん……ダ、ダメよ……したくなっちゃうじゃない……』
(……いやらしい……いやらしいわ、司)
私は壁越しに聞こえてくる司の言葉にゾクゾクとした嫌な感情が芽生えているのがわかった。
気分が悪くなるようで、吐き気に見舞われて思わず口を押さえる。
二人の絡み合う姿を想像すればする程、私の吐き気は増して、私は音を立てないようにベッドに潜り込むと布団を頭からかぶって耳を押さえた。
聞きたくなど無かった。
でも、私が帰ってきたと分っていながら司はその行為を……聞こえると分っていながらワザと私に聞かせているようなそんな風に思えてしようがなかった。
(……司、コレが司の仕返しなの?貴方を拒んだ私に対しての……酷い、酷いわ……)
知らず知らずの内に私の目からは涙が出ていた。
(嫌いだから拒んだわけじゃない。そのことは司も分ってくれると、分ってくれてると思っていた。兄弟なんだもん……戸籍上は兄弟って事になってるんだもん……なのに、こんな仕打ち……)
声を立てず、ただ布団に涙をしみこませながらそう思っていたが、それは自分に都合のいい言い訳を並べているだけだと言う事も十分自分で分っている。
始めに突き放したのは私自身。そんな言い訳をする資格も無い。
でも、そうでもしなければ自分が壊れてしまいそうだった。
今頃、司の部屋では止めると言いながらその行為が始まっている事だろう。
それを思えば思うほど、自分の心の中に生まれてくる言い知れぬ憎悪と嫉妬に私は必死で戦っていた。
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