疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

愛しさ故 6

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声を殺して布団を揺らしながら泣いていた私は頭からかぶっていた布団をバサッと剥がされビックリして涙でぐちゃぐちゃになっている顔を布団が流れていった方向へ向けた。
「……司」
布団を片手に持って、眉間にシワを寄せた司がそこに仁王立ちしていて、私は顔をその視線からそらし、枕に顔を埋めて言う。
「ノ、ノックもしないで……」
「……したよ。そっちが気づかなかったんだろ?」
「だ、だからって入ってこなくても」
私の言葉に司は答えなかった。
ただ、足元の方の布団がゆさりと沈んだ。
司が腰を下ろしたと言う事はすぐにわかり、私は体をビクンと揺らす。
暫く静かなでも、私にとっては緊張の空気がその場にあり、私は体を動かす事も喋る事もできずただ、枕に顔をうずめてその空間の静けさを受け入れていた。
「……泣くなよな……」
不意に司の呟きが聞こえ、私の目からは再び涙がこぼれ始める。
(泣きたくて泣いてるわけじゃないわ……)
そんな文句すら返せずに、ただ、枕に涙をしみこませていると、フワッと大きくて温かい手が私の頭をなでた。
「泣く位なら……自分から離れようとするなよ……」
その言葉が私の中にあるせき止めていた壁を壊してしまった。
涙を流したまま、頭にある手を思いっきり弾いて、その上体を起こして司をにらみつけた。
「アンタに!司に何が分かるって言うのよ!!」
わきあがる感情を抑えることなど、もう出来なかった。
私の口からは決して言う事は無いだろうと留めていたはずの言葉が溢れだす。
「これ見よがしに女を連れ込んで……いやらしい!汚いわ!!私がどんな想いで……どんな気持ちで突き放したと思って居るのよ!司なんてウチに来なければよかったのよ!そうすれば、こんなに苦しむ事なんて無かったのに……私だって、私だって!!」
押し殺していた涙は大きな叫び声となって私の部屋中にこだました。
まるで小さな女の子が感情のまま泣き叫ぶように。
「俺は……」
司が何か言おうとした時、私の泣き声を聞きつけてパートから帰ってきた母が私の部屋にやってきた。
「司?花梨?どうしたの。大きな声で泣いたりして……」
「……わからないんだ。母さん、花梨を……花梨姉さんを頼むよ……」
「あらあら……花梨?どうしたの?」
母は私をその胸に抱きしめて泣きじゃくる私の頭を優しくなで、なぐさめる。
母の腕の間から悲しげな表情をしながら私の部屋を出て行く司の姿が見えた。
何故か胸が引き裂かれるように痛かった。
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