疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 8

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「俺の……俺のせい?」
泣きそうな瞳を私に向けてくる司の顔から私は視線を反らせる。
今、その顔を見つめてしまえば私はその唇を奪いたくなってしまうだろう。
「俺を見るのも嫌なの……」
「……そうじゃない、そうじゃないわ」
「じゃぁ、どうして」
「……司だって、分ってるでしょ?私達は一緒になっちゃいけないの」
私は司に向かってそう言っていたが、その言葉は自分に言い聞かせるように響いていた。
私の顔を包み込む司の手に力が入る。
「分らない……分らないよ。俺は花梨を愛してる……花梨だって俺の事を……」
「嘘……司は私を愛してなんかいないわ」
「嘘じゃない!」
「じゃぁ、どうしてあんな残酷な事ができるの?!分らないのはこっちの方よ!!」
思わず溢れ出した涙を私は拭う事もせず、司を睨みつけて頬にあった司の手を弾いた。
「酷いのはお互い様じゃないか……俺の気持ちを知っていながらそれを拒んだのは。先に俺を突き放したのは花梨だろ?!」
「だって、仕方ないじゃない!貴方は私の弟で、私は貴方の姉なんだから!!」
睨みつける私の視線に司は歯を食いしばって視線をそらす。
「……花梨がそういうなら、俺はもう何も言わない……弟になるように……良い弟になるようにするよ。でも、分らないよ……花梨……好きだけじゃダメなのか?だって、俺は血がつながってないんだ……なのに」
「……お願い、もう、言わないで……お願いよ」
両手を顔でおおって、嘆願する私に、司はそれ以上何も言う事無くじりじりと後ずさりをして呟いた。
「……気をつけて。いってらっしゃい。花梨姉さん」
バタバタと走り去る足音が消えた時、私の中で司の「花梨姉さん」と言う声だけが鮮明に響き渡り、私はその場で大声を上げてないてしまった。
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