疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

失望 2

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「とりあえず、家庭教師の人には辞めてもらって、別の男の家庭教師を呼んだほうが良いんじゃない?」
「そうよね……その方が良いわよね……」
「それと……母さんが嫌じゃなければきちんと司と話したほうが良いと思うけど。何か間違いが起きてからじゃ遅いから」
「……気が重いけど……そうね、何かあってからじゃどうしようもないもの。ねぇ、花梨、近いうちに一度コッチに帰って来れない?」
「それは……」
私は母の提案が何を意味するのか、それがすぐに理解できた。
恐らく母は私を交えてその話をしたいと考えているんだろう。
でも、そうしたとき司はどんな行動に出るだろう?原因は私だと母に怒鳴るだろうか……。
私は頭の中でそんな事を考えながら答える。
「それは、会社に聞いて見ないと分らないよ。休みがもらえれば帰れるけど……土日だけで帰るのは無理があるから休みを貰わないと」
「はぁ〜、そうよね」
「ごめん」
「あぁ、いいのよ。別に花梨が悪いわけじゃないんだから。ちょっと母さんからそれとなく話してみるわ」
そういう母さんの言葉が私にズドンと重くのしかかった。
「花梨が悪いわけじゃない」……ううん、きっと悪いのは全部私。
世間体に縛られて司を受け入れてあげられなかった私のせい。
母からの電話を切り、私の瞳からは絶え間なく涙が零れ落ちていた。
悲しさと、怒りと、寂しさと……全てが入り混じった涙。
枕に顔を押し付けて声が出て行かないようにして大声で泣いた。


私はかなり泣き疲れて寝てしまったのか、目を覚ますと明け方だった。
腫れぼったい瞼を必死で開くように冷やしたりして、化粧で荒れた肌を隠して出社する。
泣きすぎた翌日は顔がはれて頭が回らない。
午前中は全く仕事と言う仕事が出来ずにおわり、昼休みがやってきた。
いつもは女子社員の他愛のない話に適当に相槌を打って楽しげにしている昼休みだったが、今日はそんな気分にもなれず、余り人が来ない資料室を見つけて資料が置かれている棚の間に隠れるようにして、背中を壁につけ、体育座りをするように床に座り、膝を抱え込んだ。

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