疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

過ぎし恋 1

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「何をやってるんだ!」
後ろから聞こえたその声に彼はビクリと体を揺らし、私への押し付けを止めた。
次の瞬間、彼の体が私の目の前から消え、私の前には黒い影が立ちふさがる。
「これはどう言う事だ?」
低いその声は怒りを含んで彼に向けられ、視線をその声を投げた方へ向ければそこにはズボンを膝に巻きつけるようにしてだらしなく倒れる彼が居た。
私の目の前にいる男性をみた彼は引きつったように言う。
「し、支社長…どうして…」
「俺がこの営業所に居ては不満か?」
「い、いえ……」
しどろもどろの彼に再び雄介は言う。
「質問に答えてないな。これはどう言う事だ?」
「ど、どういうって……雨宮さんが俺を……」
「雨宮が君を?俺には君が雨宮花梨を襲っているように見えたが?」
「ち、違っ!誘ったんだ!花梨さんが……」
「雨宮、お前が誘ったのか?」
「……違うわ。私はただ何もしなかっただけよ……」
「ふぅ……。どちらにしても、この状況は君に分が悪いぞ。雨宮にも責任はあることだからな、今回は見なかったことにしてやる。君も人には言わない事だ。自分の首を絞める事になる」
鋭い視線を向けて彼に言うと、彼は青ざめた顔で慌ててズボンを引き上げて資料室から出て行った。
バタン!
資料室のドアが閉まると、雄介は背広を脱いで、乱れた私の体にかけて言う。
「君は……何をしているんだ……」
「……とっくに別れた貴方には関係無いわ」
「急に転勤を申し出た事と関係があるのか?」
「関係ないって言ってるでしょ!放って置いてよ!」
優しくされればされるほど泣きたくなった。
涙が自然と出てきて、私は涙を沢山溜めた瞳で雄介を睨みつける。
雄介の優しすぎる瞳に耐えられなくなって突き飛ばそうとした私の両手を雄介が掴んで、私の唇にキスをした。

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