疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

過ぎし恋 2

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「んぐっ!んン……」
雄介の優しいキスは私の涙を止める事無くただ流していく。
ただ唇が触れるだけのキス。それがこんなに自分を苦しめるなんて思っても見なかった。
そっと離れた雄介は両手で私の頬を包み込み、親指で私の溢れ出てくる涙を拭って言う。
「自分を……粗末にするな」
「ぅうっ……あ、貴方に……関係無……うっ!」
「そんなに泣いてるくせに頼ってはくれないんだな……」
寂しげに言う雄介はグイッと自分の胸に私の頭を押し付けるように抱きかかえ、その腕の力を強めた。
「や……ダメ、服が……汚れ……」
「かまわん……俺がしたいようにしているだけだ」
「……馬鹿」
胸がはじけそうだった。
優しい懐かしい腕が今、自分を抱きしめてくれている……その状況に甘えてしまいそうになる自分を一生懸命に押さえ込んで、私は雄介の体を両手で押した。
「もう、大丈夫だから……」
「……今日はもう帰れ。俺が言っておく……」
「へ、平気……」
「そんな顔して仕事をしてみろ、何を言われるかわからんだろ……俺が送ってやる」
「い、いいわよ……」
「ダメだ」
雄介はそう言うと私にかぶせた背広ごと私の体を横抱きにして、背広のポケットからハンカチを出させてそれで顔を隠させる。
(……放っておいてほしいのに……お節介)
資料室を出て、廊下を歩けば、勿論皆が声をかけてくるが、雄介は「具合が悪いらしいから早退させる」とだけ言い、私を自分の車の助手席に乗せて、運転席に座り、寮へと車を走らせた。

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