疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

過ぎし恋 4

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「あの時……花梨が俺に別れを言った時、俺は俺の顔を見ずに別れを言う花梨に何も聞けなくてただ『分った』とだけ言った……でも、俺は納得できなかった」
「……」
「どうして花梨は急にそんな事を言い出したのか……。その理由が知りたくて、俺は花梨の様子をずっと見ていた……そして気づいたんだ……お前の目がお前の心が誰に向かっていっているのか……休みの日、家族で出かけるお前の目は何時だって司を追いかけていた。俺には見せた事のない笑顔をヤツに送っていた」
「それだけじゃ……分らないでしょ?」
「俺は……ずっと花梨だけを見てきたんだぞ。分るさ……」
私を抱きしめる手がグッと強くさらに私の体に食い込んで、雄介の胸にくっ付いた耳からは雄介の少し早くなる鼓動が聞こえる。
「……軽蔑するでしょ……して良いわ……」
「軽蔑……か。しないさ……」
雄介の腕の中、うなだれて呟いた私の言葉に雄介はそっと私の頬に手を当てて、私の顔を自分の方へと向ける。
そこには軽蔑なんて言葉とはまるで逆のとても穏やかで優しい顔があった。
「……軽蔑はしない……でも、嫉妬はする」
「嫉妬?」
「花梨の心を奪い取ってしまった司にな……そして、今こうして花梨を苦しめている司に……」
雄介の言葉は私の胸を締め付ける。
視界が徐々にぼやけ、私の目には再び涙が沢山溜まっていた。
雄介は涙がこぼれ落ちる前に唇で私の涙を拭う。
「……雄介」
雄介はさらにこぼれてくる涙を指で拭って、微笑んだが、私の目に雄介の指に光るものが入ってきた。
左手の薬指に輝く指輪。
思わず視線がその場所に釘付けになり、私の視線に気づいた雄介は私に言った。

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