疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

揺れる花梨 3

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一体、何が起こったのかわからず、瞼を開けて見てみれば、ソファーから転げ落ちるようにして、しりもちをついている雄介がいる。
「え?何?」
目の前の光景が何を意味するのか分らず、頭の中の思考がストップした時、私は背後からグイッと引っ張られるようにして立たされて、ストンとその引っ張られた所へと納まり、ギュッと何かが私を掴んだ。
ギュッと私の体に絡まって、苦しいほどに締め付けてくる物が人の腕だと理解するまで少し時間がかかり、そして、それが誰か分かって私の心臓はドクンと鳴る。
そんなはずは無い。そう思っていても、後ろから聞こえる息遣い、腕の……体の温かさ、そして鼻をくすぐる香りが「そうだ」と物語っていて、私は振り返って確かめる事をせず、締め付けられる腕の中で固まった。
背中越しに、私を抱きしめるその人物の心臓の音が聞こえる。そして、多分私の胸を鷲掴みにしている背中の人物も私の心臓の音を確認している事だろう。
私の予想が正解であると確信させたのは雄介の口。
「司か。久しぶりに会うな」
(!!。司、やっぱり司だった……)
そうであると分って、益々私は振り返ることが出来なくなっていた。
雄介の言葉に私を抱きしめる司の腕の力は強くなり、乳房を包んでいる手の指も私の胸に食い込むほどに強くなる。
その力強さは今まで感じた事の無い強さで、私は思わずギュッとその腕を掴んだ。
床に座って、コッチを見ている雄介の瞳が少し揺れ、ジッと私を見つめたが、私はその視線を受け止めることが出来ず、目をそらしてしまう。
今の私の頭の中にあるのは司の体の感触だけ。
先ほどまで雄介が触れたことで体が感じ、甘い息を吐いていた私。
でも、司の腕に、胸の中に居るとわかった途端、私はソチラを選んでしまった。
雄介始めていた淫欲はあっという間にそのなりを潜め、今度は司の温かさにドキドキしてる。
何て自分勝手で身勝手な私だろう。分っていながらも私は司の腕を振り払う事は出来ずにいた。
雄介の瞳は私から逸らされることは無く、雄介の事、私の考えなんてきっとお見通しなのだろう。
そう思い始めた私の頭は少しの冷静さを取り戻し、私の中では1つの事が気にかかった。
司は今どんな顔をしているだろう……。雄介を突き飛ばしたと言う事は恐らく雄介との行為を見られた。
私の声も聞かれただろうし、雄介の囁きも。
淫女な私を見られたと気づけば、私の瞳から一筋涙がこぼれた。
司だけにはそんな私を知られたくなかったし、何より雄介との所なんて見られたくなかった。
目を閉じて、俯く私に雄介はニッコリ微笑んで立ち上がり、私の目の前に立つ。
まるでサンドイッチされるように私は2人の間に居て、背の高い2人の谷間に私は体を置いている。
ビクリと司の体が揺れて、私を雄介から引き離すように私の体を後ろに引っ張った。
密着しているのは司の体。でも目の前にいるのは雄介。
なんだか不思議な感じがして、なされるままになっていると、フゥと言う雄介の大きな、わざとらしい呆れた息遣いが聞こえた。
「で、何しに来たんだ?」
とても冷静で、大人な対応の雄介の声。
雄介が私との間合いをつめてくるので、私は掴んでいた司の腕を放し、腕をダラリとさげた。
「……会いに来ただけだ」
私の耳に、懐かしい司の声が響いた。
ただ、それだけなのに私の心臓はドキドキと熱く鼓動し始める。
そんな私の様子を分ってなのか、近づいてきていた雄介が下されている私の手をとり、フッと笑った。






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