疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

揺れる花梨 5

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「俺はもう、子供じゃない!」
雄介の言葉に司がムッとしながら答えている。
静かに対応する雄介とは違い、司は自分の感情を表に出し噛み付かんばかりに言い返していた。
「フン、親に金を出させて学校に行って、好き勝手しているヤツが子供じゃないだと。お笑いだな」
「アンタだって俺の年は同じだったはずだろ。偉そうに言うな!」
「ふむ、それは正論だな。まぁ、俺はお前ほどひねくれては無かったが……あぁ、成程。そういうことか」
クククと楽しげに笑った雄介は言葉を続ける。
「童貞君では無いと言いたいんだな。司クンは」
「なっ!」
「花梨とでもやったか?いや、それは無いよな。花梨がやらせるはずは無い」
雄介の言葉にとうとう司は黙りこくってしまった。
私も雄介は一体何を言い出したんだと思い、俯いて閉じていた瞳を上げ、下から雄介を見る。
雄介は私と視線を合わせる事無く、雄介から視線をそらす司に冷たい視線を浴びせていた。
黙ってしまった司の顔はとても暗く、唇を少し噛み締めていて、その表情だけで司は私に知られたくは無い事があるのだと分る。それはきっと、あの家庭教師とのセックス。
女子生徒とそういう関係でないと言うことは見れば分っていた。でも、母さんから聞いたあの話。
私の部屋の私のベッドの上での出来事。
家庭教師の女から母さんが聞いた内容では、司は私と変わらない年齢のその家庭教師と会って5度目でそういう行為におよび、その後、授業のある日は必ずセックスしていたと。
何度も何度も、私の居ない私のベッドで2人は交わっていたのだ。
冷たい視線を浴びせながらも、雄介は呆れたような口調で司に言う。
「童貞君では無くって、しかも、その相手は花梨じゃ無いって言うのは当たった様だな。何だ、お前は女なら誰でもいいんじゃ無いのか?」
「ちょ、ちょっと!雄介!言いすぎ」
「言いすぎ?何処がだ?コイツは花梨、花梨とお前の事を言いながら、お前の目の届かない所で別の女の体を貪ったんだぞ?」
「そ、それは……」
雄介の言う事はまるで私に言われているようなそんな気がした。
司を想いながら雄介の体を貪った、そして先ほど熱くなってしまった私の事を言っているようで思わず口篭ってしまった。
「なぁ?司、俺の言う事が間違っているなら反論してみろよ。出来ないんだろ?」
「っ!……」
「花梨がお前から離れたのは別にお前に女を知って欲しかったからじゃないのに、お前は我慢できずにやっちまったんだ、フン、最低だな」
「お、お前に!お前に俺の気持ちなんて!!」
「わかりたくもないね。たった一度の過ちと言うならまだしも、お前は何度も何度もその【間違い】とやらをくりかえした。そんなお前の気持ちなど分かりたいともおもわねぇな」
「……ど、どうして?」
雄介の言葉に司が震え始める。そりゃそうよね、そんな風に言われれば誰だって疑うわ。
あまりに言い過ぎる雄介に私がそれ以上はと止め様とした時だった。
「知ってるぜ、俺も、そして勿論花梨も。お前が家庭教師の女と……」
「雄介!止めて!…ぁんっ!」
雄介が言ってはならないことを言おうとして私は思わず叫んだが、雄介はフッと笑って、司の目の前で私の唇にキスをした。
ワザと私の顔を天井に向けて、自分の頭を斜めに避けて、驚く私の見開かれた瞳に、司の顔が映るように。




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