疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

揺れる花梨 6

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私の瞳に映った司。驚き、怒り、最後には苦しそうな表情へと瞬時に移り変わる。
司は私の顔を見たまま、その瞳を揺らしていた。少し涙ぐんだように見える濡れた瞳。
昔と変わらない。
そうやって強請るような瞳を私に向けて、私はついその瞳に負けてしまう。
でも今回、私は瞳を閉じなかった。一瞬、司の顔を見て瞼をとじそうになったが、フッと脳裏をよぎったのは私の部屋で行なわれていた行為のその想像の映像。
見知らぬ女が司の行為に喘ぎをあげ、激しく司を求める姿と、その女の発する快楽に身を委ね、女の言うままに棒を突き立て快楽を貪っている司の姿。
瞬間、私の中には司が苦しめば良いと言う思いが生まれてしまったのかもしれない。
私の瞳は揺らぐ事無く、細かに揺れる司の瞳を見つめ返した。
私は私の思いをすべて瞳にこめる。
『そうよ、私は知っている。貴方が私の部屋で何をしていたのかを』
司の瞳は私に言う。
『どうして知ってるの?どこまで知ってるの?』
疑問と不安をにじませる司の瞳はただ、揺れ動き潤んでいった。
ジッと私に見つめられれば見つめられるほど、司の私を掴んでいた腕の力は緩んでいき、すかさず、雄介は私の腰に手を入れて、私の体を自分の方へといざなう。
「花梨……」
小さく呟くような司の声が聞こえたが、私は背中を向けたまま、振り返ろうとは思わなかった。
私の中に生まれた司に対する苦しめばいいという感情は、自分の行為を棚に上げ、ただひたすら司を拒絶するほうへと働いていく。
きっと、やっていることは司も私も変わらない。
互いに肉欲に忠実に、とても安易な方法で、すぐそばにいる存在にそれを求めた。
だから、司が私以外の女の体を抱き、貪るようなセックスをしたということに私の感情は少ししか動いていない。
それよりも、司が、私の部屋の私のベッドの上で、そのような行為に及び、それが一度きりではなく、母さんが気づくまで繰り返されたことに私の感情はひどく動かされていた。
雄介の腕の中、背中から司がポツリとつぶやく。
「本当に、知ってるの?花梨……姉さん」
司の呟きに私は背中を向けたままうなづいた。
「……どこまで?いや、どうして?」
ごめんなさい、そんな謝罪の言葉は聞こえず、司が気にするのは私にどうして知れてしまったのかということ。
それが私の感情をさらに逆なでし、そんな風な怒りに似た感情を沸き起こさせているにもかかわらず、どこかでは心を落ち込ませていった。
「『どこまで?』『どうして?』フフッ、そっちのほうが気になるのね。そんなこと聞いてどうするの?」
静かに言う私の声に司が答えることは無く、そんな司の態度にクッと私の眉間に皺がより、私は吐き出す。
「私のベッドでの寝心地はよかった?私の部屋の私のベッドで裸の女を抱いた抱き心地はどうだったのかしら?毎回お勉強の前には必ずやってたんでしょ?そうしないと勉強がはかどらなかったのよね?それとも、お勉強の息抜きだったのかしら?」
そう吐き出しながら、私の瞳からは涙が自然と流れていた。




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