くちづけ

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

ゼロと言う女 10

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それは一種の儀式。
ゼロという夜の顔を持つようになってから始まった習慣。
初めは……穢れた体を清める意味があり、洗面器一杯の水ではおさまらなかった。
何度も何度も頭から水を被っていた。
好きでもない男に抱かれる事が初めから普通だと感じる女は居ない。もちろん私もその1人。
特に私は快楽を求めているわけでもなければ、快楽を感じさせてもらったことも無いから余計に体を絡ませる行為が【良い事】だとは認識できずにいた。
だから、自分で決めた夜の顔でも、自分の棲家に戻ればその違和感を拭い去る事はできず、1つの儀式を挟む事にした。
都会の水道水でも水を浴びると言う行為が自分を清めることになるだろうと勝手に思って。

今では……昼の顔に戻る為の儀式。
夜の顔で穢れていると感じる事は無くなった。
夜の顔があるからこそ、昼の顔があるのだと……そう思うから。
割り切ったのか?って聞かれれば違うって答えるでしょうね。
体を提供する、その行為に割り切りなんて言葉は当てはまらないから。

夜から昼へ。昼の顔に戻る為のケジメ。
夜ではなく、昼に対するケジメ。
「フフ、馬鹿馬鹿しい……」
そう呟いて、どこかで馬鹿にしている儀式なのに私はその儀式をやらずには居られない。
ある意味……。
私は自身をそうして律しているのだろう。
湯船に湯が溜まるまで、水を浴びたその体は冷え、鳥肌となってその寒さを訴えてくる。
私の体に痣が無い日は無い。
薄黒いものから、紅いものまで。
その時間経過が分る痣が散らばっているのだ。


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