くちづけ

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

ゼロと零那 4

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会社に着けば私に待っているのは地味な事務作業。華やかな受付嬢はバッチリメイクの女の子がその権利を握っていて、入社以来私は一度も受付に立ったことは無かった。
別にね、いいのよ。その方が楽だから。
媚びを売るのは嫌い。営業スマイルなんて、夜の時だけで十分。
私は私で与えられた仕事をそつなくこなして、毎月の会社からの報酬を受け取れればそれで良い。
ただ、その受付の女の子達が、まるで私を見下すような視線と口調でやってくるのだけは腹が立っていた。
彼女たちは何かと理由をつけて男性社員に擦り寄って、そして、嫌な仕事から逃れようとする。
馬鹿馬鹿しい。
そうして逃れて、自分に何の得があるのだろう?
自分でやらなければ覚えれる事もない。覚えないでやっていけると言う訳の分らない自信が彼女達にはあるのだろう。
でも、その付は必ず私にやってくる。まぁ、それも私にとってはたいした仕事じゃないから別に良いんだけど。
美しく着飾って、セックスアピールを決して忘れない彼女達は、1日に1回は私のところにやってくる。
「……何か?」
いつも通りに私が聞けば彼女達は申し訳なさそうな表情をして、その瞳の奥では私を馬鹿していた。
「すみませぇ〜ん、私、ちょっと今日は忙しくって」
「そう、別にかまわないわよ。たいした仕事じゃないから」
「そうですかぁ〜?ありがとうございますぅ〜」
嫌な猫なで声。
こういうのに限って、影ではタバコをふかしていたりするのよね。
そして、男はそういう姿を想像することも無く、彼女達の甘い囁きに騙されて行く。
本当に馬鹿な女は嫌いじゃないわ。むしろその方が好感がもてるわね。
でも、馬鹿を演じる女は嫌い。
そうね、私は女だけど女らしい女が嫌いなのかもしれないわ。
計算高い女。
自分を高く評価しすぎる女。
褒められることだけが嬉しい女。
そんな女達の姿に見え隠れするのは「私って凄いでしょ?」と言う何の徳にもならない自信の自慢。
皆、大嫌いだわ。
男はね、同じ様な人物でも馬鹿だからまだ可愛げがあるのよ。
でも女はダメね。
考えてみれば世の中良く出来ているのかもしれない。
騙される男がいて、計算高い女がいる。
計算高い女がいるから、騙される男がいる。
だからこそ、ゼロと言う女も、零那という女も存在しているのかもしれない。


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