空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

傷心 6

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向日葵の家ではいつもこの春休みの時期に祖母の家へ行く。
普通ならお盆に帰省するのが当たり前であろうが、向日葵の家では丁度、祖父の命日と重なるので、夏に帰省しない代わりに春休みに行くのだ。
そんなに宿題も出ていない短い春休みの間。
結構バタバタするスケジュールになるのだが、狭いこの住宅街の家と違って、とても広くてすがすがしい気分になる祖母の家に行き、とっても優しい祖母に会うのは向日葵の毎年の楽しみでもあった。
いつもは母に言われなくても用意しているのに、今回は容易どころかそのことすら向日葵の頭には無い状態。
母に言われて初めて気づいたのだ。
「すっかり忘れてた」
忘れた事など無かったのに、今回は色々な出来事が一気にありすぎてすっかり忘れてしまっていた。
「でも、少し助かった……かな……」
溜息をつきながらも、少しホッとし、向日葵は着替えてからケータイを手にする。
「悪いこと、してるよね…私…」
ケータイのメールを開いて、遼から昨日送られてきた時間を知らせるメールを画面に出し、返信ボタンをおした。
遼が自分を見つけてくれた時。
凄く寂しくて、この世に1人しかいないと思えて、見つけてくれた遼が眩しく見えた。
量と一緒にいた時。
抱きかかえられていると安心したし、優しさに甘えようと心から思った。
でも、結局それは出来なかった。
向日葵は遼にキスされる瞬間、とっさに嫌だと思い、そして、その時頭に浮かんだ顔は太陽。
「……結局、私は葛木君に太陽兄ちゃんを重ねてただけだったんだ」
子供の頃、イジメられて、寂しさに震えている時、手を差し伸べてくれたのは太陽だった。
その時の太陽と、今回の遼が重なってしまっていただけだと、向日葵は溜息をつく。
自分の身勝手さにほとほと呆れ、康子の言っていた事を思い出して苦笑した。
「あの時は腹が立ったけど…やっぱり友達と言った所なのかな…」
向日葵は自分自身に嫌悪感を抱きながらも、ケータイのボタンを押し、メールを書いて送信した。

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