十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

鏡屋 18

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会社についてからも私の頭の中はあの人のことばかりだった。
特別カッコイイと言うわけでは無い。
何かをされたと言うわけでも無い。
ただ、彼の事が気になってしようがなかった。
(何かあったのかと心配したって言う事は……やっぱり私の知り合いなのかしら?でも、思い出さないわ……)
仕事中もあの人の事を考えていたが、コレといって仕事に支障はきたさない。
会社では昨日同様に声がかけられることが増え、そして、私の仕事は減る。
皆が「やってあげるよ」と言い、私はそれにニッコリ微笑んで「ありがとう」って言えばよかった。
別の男のことを考えながら、私は傍の男に笑顔を振りまく。
そんな自分の行為を理解した時、私は自分自身に冷笑する。
(……本当に痛感するわ。人間皆、内面とか言うけど、結局容姿なのよ……)
チラリと視線を流せば、男のにやけた顔が目に入ってくる。
私を邪険にしていたあの部長に、私はもう頭を下げることは無い。
微笑み返す、それだけで、私が手玉に取っている。
ただ、容姿が変わっただけなのに、今日も私が1人になればそれを見計らっていたかのように、誰かしら男性が現れて自分をアピールしていった。
女子社員にしたって同じこと。
私の事を見下していた連中がとっても私と仲が良い様に振舞う。
それは私へのアピールではなく、他の男性へのアピール。
私と仲が良い事で私と一緒に居ることで、男の視界に入り、そしてさりげなく自分を売り込もうとする。
(馬鹿ね。昔の私と一緒に居れば、それはそれはアナタが引き立ったでしょうけど、今の私と一緒に居るとただの私の引き立て役に過ぎないのよ?それが分らないなんて何て馬鹿な女)
笑顔で他愛の無い話をしながらも、私はそう思っていた。
始めは……
そういう人たちの、そういう態度も。
声をかけてくる男性達の行為も。
全てが私を満たす優越感になっていた。
でも……
徐々にそれがイライラを産むようになっていく。
彼等の存在が鬱陶しいと思い始めていた。
彼等は【今の私の存在】と【過去の私の存在】、それを意識をしていなくても、その記憶が違ったものになっていても、私の中ではキチンとした記憶と存在がある。
彼等が【過去の私の存在】に対して行なっていた行為。
それを覚えていることが、こんなにイライラを生み出すとは思っても居なかった。
始めはその頃と今を比べて、「ほら、ごらんなさい」といわんばかりの上から目線で居た私も、今では「どうせ、アナタ達は私の中は見ていない、見ているのは……外見だけなんでしょう?」そう思ってしまう。
(そうよ、この人たちが見ているのは容姿。内面など見ていない。だったら……)
私はその時、どうせなら、この外見で連中を利用してやる。
そう思い始めていた。

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