アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

龍印 6

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部屋に戻るとそこにあのクソ親父の姿も誰の姿も無く、聖君は私をベッドに下ろして自分は近くの椅子に腰掛け、ふ〜と一息つく。
「なんだ、皆、帰って来てないのか?」
聖君がそう言うと、後ろから入ってきた枉が応えた。
「いや、少なくとも豹は帰って来ているはずだが……なんだか様子が変だったからな。自室に戻ったのかもしれない」
「ま、いいや。とりあえず、話しとく事は話しておけば良いよな、泪兄貴?」
「そうですね。では、話を……」
ゆったりと優雅に私の目の前の椅子に腰を下ろした泪さんは話し始めた。
「凛殿も分っている通り、凛殿からすれば、この世界は異世界になります。もちろん我等からすれば凛殿の世界が異世界となるわけですが」
(ま、そりゃそうだわね〜日本人が海外に行けば自分自身が外国人になるのと同じね)
「この世界には大きく分けて4つの国が御座います。森と土の国【レフスト国】、水と氷の国【ウェルスト国】、砂漠と風の国【デスラート国】、そして我等が国、火と鋼の国【サースト国】」
(……お、覚えられないわ)
「過去には大戦をしていた国々も現在は調和を取りながらその均衡を保っておりました」
「ふぅ〜ん、平和ってことね」
泪さんはココまで話して疲れたようにフゥっと溜息をつく。
その様子を見た聖君が泪さんが口を開く前に説明を始めた。
「つい最近までの話だ。今は戦いすら起こってないが、臨戦態勢って所かな〜」
「臨戦態勢って……なんかあったの?」
「今から半年ほど前だ。突然それぞれの国にありえないほどの力を持った集団が現れた。勿論サーストにもな。奴等は【侘瑠火(たるほ)】と名乗って、それぞれの国のそれぞれの王に取り入ったんだ。そして、その国の王をたぶらかした……俺達一族は昔からそれぞれの国の王家に仕え、唯一、何処の国にも属さない一族だったんだけど、その侘瑠火がやってきてから、俺達は城を追い出される事になったんだ」
「……ちょ、ちょっとまって」
「ん?」
「侘瑠火っていう集団は1つなんでしょ?そんなヤツラが同じ時期に同じ様に現れたら普通は疑わない?それとも、王様って馬鹿なの?それに……王家に仕えるって?」
「王様が馬鹿って。言うな〜凛は。そうじゃないさ、侘瑠火って奴らの方が賢かっただけだ」
(……でも結局やられちゃったんだったら馬鹿だと思うけど)
「それに、侘瑠火っていう集団だって知っているのは俺達鬼龍王の一族だけ。それが分ったのは俺達が城を追い出されてからだったし」
「んじゃ、王様に助言すれば良いじゃない」
「それが無理なの。既に王家の皆様方は連中の手中。操られまくっちゃってるから」
フッと呆れたように笑って言う聖君に枉君が言葉を付足す。
「聖兄も言ったが、とても力の強い集団なんだ。俺達の力では到底かなわない……だから凛を呼んだ」
「……あ、あの〜私を呼んだ理由が今ひとつ不明ですけど……一般大学生に過ぎない私を呼んでどうしろと……」
引きつった笑いを浮かべる私に泪さんが微笑んで言った。
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