アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

東の森のアーリー 3

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緑の道は私たちが歩いてきた道(……と言うより獣道だったんだけど)とは違い、森の中をまっすぐ東へと貫いている。
森の木も草も、まるで自ら退くようにその道を通していて、不思議な事にあんなに頻繁になってきていた魔物の襲撃が全く無くなった。
「魔物、襲ってこないね?」
右横を歩いている聖君に言えば、聖君はチラリと視線だけを私に落として「そうだな」と言う。
「アーリーさんの作ってくれたこの道のおかげかなぁ?」
「あぁ、そうじゃねぇの?」
(……うそ、まだ機嫌悪いの?)
明らかに不機嫌でアーリーさんの名前を出せばピクリと眉が動き、そっけなく私に言う聖君の態度にハハッと引きつった笑いが起こる。
緑の道は、何だか体も心もスッキリしたと言うか、よ〜く寝て、爽やかな休日の朝の目覚めをずっと体験しているようなそんな感じにさせてくれていたのに、そんな気分なのは私だけの様子。
私の周りを歩く他の方々は未だ何が気に入らないのか仏頂面で歩いている。
(まぁ、燿君達は年下だし、まだ若いからって思えばわからなくはないけど……)
聖君、燿君、豹君、枉君、袁君…1人1人に目をやり、同じ様な不機嫌な表情を眺め、前方を歩いて居る後の2人に目をやった。
(泪さんや翳さんまで。いい大人でしょうに。どうしてそう不機嫌になるかな〜?)
一体何が気に入らなかったのか?全然分らない私はグルグル考えた。
(私が『そんな事』って言ったこと?それともアーリーさんの言葉?)
私が折角考えているのに、その思考を邪魔するのは零凛のこらえ笑い。
クスクス、ククク。
何か知ってるならはっきり教えてくれればいいのに、まるで私が色々考えるのを楽しんでるみたいで、せっかくの爽やかさも零凛のせいで半減した。
皆の顔色をうかがって、零凛のこらえ笑いに少々ムッとしながら歩く。
奥に進むほどに森の木々の茂みは増し、暗い空間を緑の道に従って数時間歩いていけば、目の前が急に開けた。
明るく光り輝いて、夜だとは思えないその輝きは空からも地面からも湧き出ているよう。
「……綺麗」
私が呟くと、輝く森の中心にある小屋からゆらりと人影があらわれ、コチラに歩いてきた。
キラキラと輝く周りと同じ様な金色の髪、優しい笑顔のその人はさっきあったばかりの人。
「アーリーさん……」
「はい、ようこそ凛」
そっと差し出されたアーリーさんの手に手を乗せようとすれば、横からその私の手をグイッと聖君が握り、見上げれると聖君はそっぽを向いた。
「あのね、いい加減に……」
私が呆れてムッと聖君に文句を言おうとすれば、それをアーリーさんの言葉が遮る。
「クスクス、とにかく中へ。癒しの空間はお気に召さなかったようだしね」
「癒しの空間?」
「君たちの様々な疲労は回復しているはずだよ?特に、鬼龍王の方々はコレまでの力の消耗が回復しているはずだけど」
「そうなの?」
振り向いて翳さん達に視線をやればコクリと頷く。
(なのに、この態度ってどうなんだろう?)
ハァと吐き出したい溜息を飲み込んで、申し訳なくアーリーさんを見つめればアーリーさんはニッコリ微笑んだ。
それと同時に私の頭の中にアーリーさんの声が響く。
<気になさらないで下さい。>
「で、でも……」
<シー。私との会話は内緒です>
微笑んだまま、アーリーさんは私の手を握ったままの聖君を「どうぞ」と輝く空間の小屋へと招きいれ、それに続いて私や皆が小屋へと入っていった。





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