アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

オセロな気分 2

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「お、重っ!何??」
重たくなった頭の上に手をやれば、何やらフニャリとした生暖かくモワモワした感触が手に伝わりビックリして私は手をひっこめる。
「ちょっ!何やったのよ、零凛!」
私が嫌そうに情けない顔をしながら零凛に怒鳴れば零凛は知らないわよとそ知らぬ顔をした。
全く、これが本当に私の曾々おばあちゃんだなんて信じられないわ。自分の思い通りにならなきゃイヤで、不貞腐れる。まるで私の教えていた悪ガキみたい。
私はとにかく頭の上に乗ってる得体の知れない物体が何なのか知りたくて、鏡を探した。
部屋の中は生活するのに必要な家具は全てそろっているようで、入り口のドア近くに少女趣味と言っても良いくらいの飾り立てられたお姫様が使うような鏡台が置いてあり、私がその鏡台に行こうとした時、私の頭の上から妙な声が聞こえた。
「うにぃ〜、久々のオーラだニィ。光麗かニィ?」
間延びした、低めのその声の主は、ワサワサと長い毛足のおそらく尻尾だろう代物を私の顔を拭くように前にたらして動かす。
クスクスと笑ってみている零凛と、仕様が無いという表情をしながらも、私を助けようとしないアーリーさんに何だかイラッとした私は、目の前で揺れ動くボワボワした白黒の縞模様の物体をギュッと握った。
「ふぎゃっ!な、何をするニィ!?」
「『ニィ、ニィ』煩い」
「ちょ!ちょっと凛!」
「ふにぃ!止めるニィ!わ、我をオルタの神と知っての狼藉かニィ!?」
「オルタ?知ってるわけ無いでしょ……」
「し、知らにゃぃ?!なんと、失礼極まりにゃぃ!」
この時すでに私のイラつきは頂点に近かったのだが、わけの分らない猫じみた言葉を言うふざけた輩に『失礼』と言われ、さらにそれが『極まりない』とまで言われて、私の中の何かがプツンと切れる。
「失礼〜?極まりない〜?ふざけんじゃないわよ!」
「ニャ?!」
頭の上に乗っている毛の塊を無造作にグイッとつかんで頭から引き摺り下ろしてみれば、猫かと思ったその毛の塊は、ひたすらおデブの狐。ただし、私が知っている狐よりもとても小さいサイズで、デブ猫のような感じ。
重たい猫のような狐の首根っこを捕まえて、目の前に吊り下げれば、その狐はジタバタと肉に埋もれた短い手足をバタつかせた。
私の扱いは私の中では相当の扱いだったのだが、それを見ていた零凛とアーリーさんはあわてている様子。
「り、凛、その方はとてもお偉い方なのですよ」
「……だから?」
「だから大事にせねばニャらんのだろうが!このウツケが!」
「ハッ!この世界に勝手につれてこられて知ってる方がおかしいっての。敬って欲しいならそれ相応の態度を示しなさいよね」
「にゃんという言い草!」
「あら、私の方がきっと正しいわよ。勝手に人の頭の上に乗ってさ、ま〜それは零凛の仕業だろうし、百歩譲って許しても、その後降りる事も無く、失礼だ何だと騒ぎ立てて。はじめましての相手にはまず、自己紹介を自分からでしょうが!」
「むにゃぁ!!そういう貴様は一体誰じゃ!」
「榊木凛、日本と言う国からやってきた失礼極まりない22歳の狼藉者よ」
フーと威嚇するように毛を逆立てて言う狐の鼻にフッと息を吹きかけて、ゆっくりはっきり嫌味をこめて自己紹介していると、零凛がフワリと私の傍にやってきて、コツンと頭を小突いた。



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