アナタがいたから…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

オセロな気分 6

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オルタはデブ猫のような姿からは考えられないスリムで切れ長の目がセクシーな少年の姿をして、私の顎をつかんで顔を寄せる。
「そういえばお主は20歳を過ぎても別世界で生きていたのだったな」
「そうよ、なんだか分らないうちにこの世界に引っ張り込まれ、詳しい事が分らないまま、あれよあれよと事態が進行しているのよ」
「なるほど。それが原因かもしれぬな」
その体が丁寧に支えられているおかげで手首や足首が痛くなることは無かったが、宙吊り状態で話が進むのは私的にあまり気持ちのいいものではなかった。一人勝手に納得している左右で白黒と色の違うおかっぱ頭のオルタの様子はとても鬱陶しい。
「ねぇ、一人勝手に納得されても私には意味不明だし、欠陥を取り除くって言うならさっさとやってくれない?いつまでもこの状況って嫌なんだけど」
私がキッと睨み付けて吐き捨てるように言えば、オルタはフフンと鼻で笑って額をくっつけ、キラリと光るその瞳を私の瞳に映す。
右目が白で左目が黒、ジッと見つめられる瞳には私の顔が映っていて、何故かその瞳の力に負けてはいけない気がした私はグッとその瞳を見つめ返した。
「ほぅ、あの腐った世界に20年以上その身を置いていたというのに、思っていたよりも純粋という所かニャ」
「純粋?何を言ってるの?それに、さっきから20年以上って何か棘があるんですけど」
「ニィ。細かいことは気にするでない。お主は面白い素材かもしれぬぞ」
口の端を上げて微笑んだオルタがウィンクをすれば、手足を縛っていた白黒の組紐がはずれ、空間に溶け込むように消えていき、私は床に落ちる事無くふわっとその場に浮く。
しかし、突然支えていたものが無くなって、私は立ち上がることが出来ないまま空中でもてあそばれるボールの様にコロンコロン体を転がし、その位置を定める事ができなかった。
「……何をしているんだ?」
私の様子に首をかしげるオルタ。どうやら、転がっているのが不思議な様子。
「支えが無くなって、体をどうしたらいいのかわかんないのよ!地面に下ろしてよ!」
「あぁ、そうか。お主はこういうのに慣れておらぬのだったな。イメージしろ。座りたいと思うなら座りたいイメージを保てばいい」
「イ、イメージ?」
「慣れれば自然に勝手に体がそのイメージを覚えて、自分の居たい姿で存在できるようになる」
「そ、そんな事、しなくても、地面に下ろしてくれれば良いのよ!」
「……残念だが、この空間に地面は無い」
「はぁ?!だ、だって、そこに、あるじゃない」
私が下を指差しながら、白黒の市松模様をした地面を指差せば、オルタは私の指先から視線を移して下を見た。
「あぁ、あれか。あれは地面ではない」
「はぃ??」
首を傾げる私にオルタはそのまま視線を上へ移し更に言う。
「ちなみに、あれは天井では無いし、左右にあるあれも壁ではない。つまり、この空間に隔たりというものはないのだ」
「はぁ?何言ってんの?」
この空間は確かに市松模様の白黒で変な感じはするけれど、四角い立方体の空間で、壁が無いなんて言うオルタの言い分は理解できず眉間に皺を寄せて私は首をひねった。



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