Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 14

イメージ


ハルはその結晶を拾い上げ、コクリと飲み込む。
喉を通り、ゆっくりとその体の中に溶け込む黄金の結晶。
聖魔をハルが狩れば、その聖魔の体はそれぞれの力を現す結晶となり、精神はメギドの地へと送られた。
聖魔の結晶をハルが飲み込み体内に入れることによりその結晶の持つ力をハルに与え、聖魔の均衡が崩れたことにより失われてしまったハルの力を取り戻していく。
リラの力を取り込んだハルはちらりとベッドのほうにいるサイとダースに視線を向けた。
「ってことらしいけど」
「まぁ、だからこそココに私たちがいるんですけどね。わかりきった情報であまり役には立ちませんね」
「けど、臭いがしないってのは情報としてよかったんじゃねぇの?」
ダースの言葉にサイが腕を組んで考え込み、ハルは2人に近づきながら3つのベッドを見る。
「……にしても、よくココまで喰えたもんだ」
「ハルピュイアだからな、喰い方も汚いだろ?」
「で、何で1人目に使い魔入れてるんだ?」
「だってよ〜サイが滅してしまうと面倒だって言うからさ」
「ったく、気にせず滅してしまえば良いんだ。面倒くさい」
チェッと舌打ちしたハルに考え事をしていたサイはちらりとその視線をハルに向けて、無言の圧力をかけ、それを感じ取ってハルはハァとため息混じりに1人目の男子生徒の元へと近寄った。
黙示録を鞘から抜いて、男子生徒の胸につきたてれば、黙示録はその体を切り裂くのではなく、その切っ先は男子生徒の体に溶け込むように入り込み垂直に立つ。
「何してんだ?」
「裁定。こいつに再び命を与える価値があるのかどうか」
「なんだ、ハルが判定するんじゃないのか?」
「ダース、勘違いするな。私は単なる管理者、全ての裁定は黙示録が行う」
「へぇ、んじゃ、ハルのいる意味ってないんじゃね?」
「アホ。黙示録を扱えるのは私だけ。それに、黙示録にしても自分で勝手に動けるわけじゃない、そういう存在が必要なんだよ。それが私だ」
少しダースの言葉にムッとしながらハルが答えたと同時に、男子生徒に突き刺さっていた黙示録がボンヤリと緑色に輝き始め、その光は黙示録が刺さっている胸から入り込み、全身へと広がっていった。
「……で、これはどういう裁定?」
「生かすみたいだな」
「へぇ、ハルピュイアに誘われた割に良い奴だったって事か?」
「違うな。こいつには存在すべき理由があるってことだ。善であろうと悪であろうと存在理由のある奴は黙示録が生かす。ただし、存在理由があっても命で償うべき罪があれば別だが。こいつの場合はそれが無かったようだ」
「黙示録が新たな命を与えるのか?」
「黙示録じゃない。世界が命を与えるんだ」
ニヤリと笑って言うハルの言葉にダースは首をかしげ、一体どういうことなのか聞こうと口を開いたとき、目の前の男子生徒がドクンと体を大きく揺らし、ハルによって黙示録が引き抜かれる。
同じく2人目と3人目もドクドクと勢い良く心臓が動き始め、全体を眺めたハルはつまらないといった表情で数センチ、空中に体を浮かべ、その体を空気に溶け込ませ始めた。

 
イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪イメージ
inserted by FC2 system