Evil.Umpire

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

HARU 15

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空気に消え、元の場所に戻ろうとするハルに向かって、腕を組んで考え込んでいたサイが声をかける。
「待ってください、ハル」
「ぁん?何?事は済んだだろ。これ以上ココにいる意味は無いだろうが」
「気になりませんか?」
「だから、何?」
組んだ片手を顎に当て、ジッと自分を見てくるサイのはっきりしない態度に苛々しながらハルが言えば、横からダースが割って入ってきた。
「例の臭いがしないって事だろ?」
「えぇ。聖であろうと魔であろうと、その個体の臭いはあります。人とは違う聖魔だけが持つ臭いが。たとえ憑依しようともあるものでしょう?それが無いというのは……」
「ま、確かにな。おかしいよな、探すことも出来ないほどの事ってのがな」
「憑依ではない、人の皮をかぶる輩も居るがそれも血の臭いが混ざるはずです。なのに、全く臭いがしないとは……」
考え込む2人に対して、ハルは大きなあくびをして言う。
「あのな〜サイ、ダース。今ココで問答をしたところでその答えが出るのか?」
「いえ、それは……」
「出るわけ無い、そういう存在を私たちは知らないんだ。だとしたらこの事についての問答は無駄だ」
「しかし!」
「サイ、頭でっかちになりすぎると、逆に柔軟な考えも行動も出来ないぞ?良いんだよ、考えなくても。私はやってきた連中を裁定し、それ相応に対処する、そして、お前らは私を補佐すれば良い」
二カッと笑って言うハルに対して、サイはいまだ眉間に皺を寄せて納得がいかないという面持ちであったが、目配せしたダースの瞳にハァと息をついてコクリと頷いた。
「ただし……」
頷いたサイにハルが少し低い声で続け、ダースとサイ、2人がフッとハルを見つめる。
「ただし?なんだよ、ハル」
「こっちは全く連中のことがわかっていない、なのに、連中はおそらく私のことを良く知っている。姿まで知っているかどうかはわからないけれど」
「だから?」
「ダース、お前って思ってたより馬鹿だな」
ハルの言ってることの意味が今ひとつわからず首をかしげたダースにじっとりとした視線を向けて言ったハルに、ダースはムッと口を尖らせた。
「つまり、連中がどんな奴かはわからないし、何の手がかりも無く考えているのは無駄。しかし、私たちのことは知られているから連中が何者であろうとも身の回りに注意は必要ってことだ」
少し、真剣な表情で言ったハルにサイは眉間の皺をといて頷きハルに言う。
「学園の中で私たちがうろつくわけにも行きませんからハルにお任せします。しかし、何かあれば必ず私たちを」
「ん、わかってる。でも、ま、呼ばなくても来るだろ?」
「ハルと俺達は血の契約をしているからな、ハルの思考は俺達と同調して、ハルのオーラが高まれば何処に居ても俺達が駆けつける」
「とりあえず、そういうことだから、私は戻る」
手のひらを振って、ハルは空気の中へと消えていき、サイは保健室のドアを館の空間へとつないで、ダースとともに館へと帰っていった。

 
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