空と太陽と向日葵と…

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

唐突は突然に 8

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「私、帰るね」
「え?」
「用事は済んだんでしょ?朝御飯もまだ食べてきてないし、一度家に帰ってご飯食べてくる……」
「そ、そうか?」
「ん、じゃ」
笑顔で手を振って、部屋を出て行く向日葵のドアノブを閉める手を一瞬掴みそうになった太陽だったが、その手を引っ込めて、鳴り響く電話に出る。
「もしもし……あぁ、起きてるよ。別に電話してこなくても良いだろ?瞳……」
(……やっぱり)
ドア越しに太陽の声を聞いた向日葵はのどの奥が熱くなって駆け上がってくる涙を歯を食いしばって堪えた。
(あの時、私が言いたかったのは……引っ越した後だから大変でしょうなんて言葉じゃない……)
どんなに食いしばる歯が食い込む下唇の痛さが伝わってきても涙は瞼に溢れてくる。
瞼が支えきれなくなったその涙は頬を伝って重力に引き寄せられた。
(彼女が居るでしょ……そう言いたかったの。でも、言えなかった。『彼女じゃない』その言葉を聞ける確率はゼロに近いもの……)
ポタ……
始めにあふれ出た一滴が、廊下に落ちる。
「……分ってる。ん、じゃ、今日の夕方でもそっちに行くよ……今は無理だ。俺にだって都合がある……ん、じゃぁな……」
太陽の電話の終わる声が聞こえ、向日葵は慌てて廊下を走り、階段を降りていった。
バタバタと階段を降りる音に太陽はビックリして急いで扉を開ける。
階段の下を覗くと、フワリと広がる向日葵の空色のスカートと白い足、そして髪の毛が見えた。
「聞いて……たんだな……クソッ」
太陽はそう呟いて、頭をかきながら部屋へと戻ろうとした時、太陽の裸足の足につめたいものがつき、しゃがみこんで床を見てみると、そこには数的の水が落ちていて、太陽はその水滴を見て呟く。
「……泣くなよな……馬鹿」
太陽はそっとその涙を指で救って見つめ、深い溜息をついた。
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