十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 4

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【関係】……。
関係って何?
「聞いて良いですか?」
「ハイ、どうぞ」
「ココは何なんですか?」
「仮面屋です」
「仮面? あの、お祭りとかで売ってるお面屋さん?」
「いいえ、ココは面(おもて)にかぶる面ではなく、内に秘めた面をお売りする場所……」
「内に秘めた?」
「興味がお有りですか?」
「あ、えっと……」
「説明して差し上げてもよろしいですが、説明を聞くか聞かないか、それはアナタの判断。さぁ、いかがなさいます?」
男の無表情だったはずの真っ白な面がこちらに向かって怪しげに微笑んでいるように見えた。
店主の不気味な気配を感じながらも私はそこから立ち去る事が出来ない。
体が動かないんじゃない。
足も手も動かそうと思えば自由に動く。
なのに動かない。
(どうしてだろう? 帰ればいい、そうだ、帰っても良いのに……)
それでも動かない。
心が動かなかったといった方が良いのかもしれない。
「帰ればいい」と思いながらも「帰る気はない」のだろう。
チラリともう一度店主を見ると、その顔はまるで能面の若女のような艶やかな顔。
ニヤリと笑っていたと思えば艶やかに微笑む。
(どうして私はこの人のこの顔を不安だと思ったのだろう?)
既に恐怖心はなくなっていた。
コロコロと変わる店主の面に私は言い様の無いフツフツとした感情がわきあがってくるのを覚えた。
「私は……、選ぶ事はできません」
何を思ったのか、私は……、いや、私でない私の中の誰かが口を開いて話しだした。
「選ぶ事ができないと?」
「私は誰かが決めてくれた事に頷く事が良いと思っています。一番その場を治めるのに良い方法だとそう思っています」
「なるほど」
「だから、今まで自分の意思で自分のやりたい事を選んだ事はありません」
「ほっほぉ」
「帰れといわれれば帰ります。聞けと言われれば聞きます。でも、どちらかを選択する事など私にはできないのです」
私では無い、私の呟きを店主は在り来たりな相槌で返してきていたが不思議と腹が立つ事はなかった。
共感してくれているのか、それとも馬鹿にしているのか、影が現れては消える店主の面は、もはや私には【無表情】には見えなくなってしまっていた。

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