十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 11

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意味が分からない。
だってコレは私の体であって正体不明の何かである、その声のものでは無いはずなのに。
<無理って何? アナタ一体何なの?>
「無理な理由はひとつよ。アナタが私を見つけていないから。アナタが私を見つけてくれるまで私はアナタであり続けるわ」
<なんですって? アナタを見つける? どういう意味、ううん、見つけるって何なの?>
私の質問にフッと声は寂しそうな溜息を漏らして更に続けた。
「私は仮面。アナタの仮面よ」
<仮面……仮面って何?>
「それはアナタが見つける答え。私が解答する答えじゃない」
わけが分らない……。
私が見つける【答え】って何?
見つけるべきアナタは誰?
私の仮面ってどういうこと?
ただ、湧き上がる疑問符に頭の中は混乱し、考えているのに考えていないような不思議な感覚のまま、私は私の体を訳の分らないその声に預け、寂しそうな顔の母を眼にしながらも何の言葉もかけない私の中で、私はその日、眠りについた。
翌朝。
目覚めればアレは夢だった……。そんな事を考えたりしたけれど、夢ではなかった。
コレが現実。
私はまだ私の中に居た。
「アナタってまるで漫画みたいな発想をするのね。夢なわけないじゃない」
声はクスクス笑って私の考えを馬鹿にした。
一緒の体にいるせいだろうか? 彼女は私の考えを読み取ってバカにする。
<そうね、我ながら幼稚な考えだったわ>
「フフッ……。本当にアナタって楽しい」
【不愉快】
コレこそ不愉快という気持ちなんだろう。
彼女の笑い声は何故だか私をイライラさせ、私は私が嫌になっていく。
いつも通り、朝食を二人分作って、一人で食べた。、
今までいつだって一人で食べた事などなかったのに……。
朝練に間に合わなくって少し練習に遅刻をしても母と一緒に食事をして、母に見送られて学校に向かっていた。
「食事の時位は二人の時間を作りましょう」
そんな決め事があったのもあったけど、なにより夜遅く帰ってくる母に会えるのは大抵朝食の時ぐらい。
だから、食事の時間は大切にしているつもりだった。
話したいこともいっぱいあったし【親子の会話】を楽しみたかった。
「フン、でも話は全部アッチの日々の愚痴と今日の仕事の話だったじゃない。アナタはいつだって聞き役で、自分の話なんて出来た事ないじゃない」
<……無かったわ。でも、それでもいいと思っていたのよ。お母さんの中に私がいれればそれで……>
「クスクス……。私が居ればですって? そんな事、どうやって確かめるの?」
<そ、それは……>
「アナタが居るならどうして彼女は一言『最近どう? 』って声をかけてくれないの? アナタの変化に気づいてくれたことはある? アナタの悩みに答えてくれたことは?」
<……>
声は矢継ぎ早に私に質問を投げかけて、私はその全てに返答する事ができなかった。

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