十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 13

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学校につくまでの間、一人、二人と挨拶を交わして一人での登校がいつの間にか、いつもの友達と一緒に登校している。
(……どうして誰も気づいてくれないの?)
そんな私の疑問は無意味だ。
見た目だけじゃない、声も何もかも私そのもので、誰が私じゃないなんてわかるだろう?
きっと、私だって気づかない。
(皆、私を見ているようで見ていない、見ているのは表面だけなんだ……)
そんな、わかりきったことを思う。
(私はいつだって……、使える時だけ使われる存在。今までもこれからも……。気づかれなくったって別に何を気にする必要もないわ)
今一度、頭で繰り返しながら私は自分の気持ちを納得させようとしていた。
――納得。
そう、納得させようとしている。
頭のどこかではきっと誰かが気づいてくれるなんて期待を持っているのに、その期待にすがろうとは絶対しない。したくない。
なのに、その考えを捨て去る事の出来ない自分に【納得】させようとしていた。
そんな私の思考を恐らく読み取っているにもかかわらず、声は私に何かを語りかけようとはしない。
通学途中に「おはよう」といつも通りに合流した友人と楽しく朝の会話を繰り広げている。
ただ、声は私であろうとはしなかった。
私が決して言わないだろう言葉を発し感情を現す。
そんな彼女に対し、友人たちは普通に会話を繰り広げ、どちらかと言うといつもよりも盛り上がっているように感じる。
(……私と気づいてくれないどころか、私でないこの声といる方が楽しそうだなんて)
私は寂しさが心の中に広がるのを感じて、自分の体の中なのに、自分の心の中なのに、小さく小さく膝を抱え込むように隅の方で座り込んだ。
(あぁ、私の存在は皆にとって一体何なのだろう?)
小さく体を抱え込んでそう考えていた。
ホームルームが終わり、一時間目、二時間目と時間がすぎていくほどにその思いは大きくなった。
授業が終わり、次の授業が始まるまでの十分間の休み時間。
いつもなら。
席を立つ事無く、鞄から取り出した文庫本を読んでその時間を過ごす。もしくはトイレ休憩で一人トイレに立つ。
でも、声は違う。
席を立ち、様々な場所に行っては友達と楽しくお喋りをする。それが私の知らない人であろうとも。
長く感じていた十分間を今は短いとすら感じて予鈴が鳴り席に着いた声に私は不貞腐れたようにブツリと文句を漏らした。
<……とっても、楽しそうね?>
「……そう感じるの? 私が楽しそうだと、アナタはそう感じるの?」
<感じるのって、だってそうなんでしょう? 大きく笑って笑顔が絶えないじゃない……>
「ふぅ〜ん。それが仮面だとは感じないの?」
<え? どういうこと?>
「……分らないなら良いわ。私はアナタに答えを出させる為の存在では無いから」
そういった声はなんだか私を馬鹿にしているようで、そして、私の事を悲しんでいるような感じで、私はただ戸惑った。
(本当に意味が分らないわ。答え……。そうだ、前も言っていた【答え】だ。私はその【答え】を見つけ出さなければ体を返してもらえない。でも、【答え】って何?)
黙りこくった私に声は何度目かの溜息をついたようだった。

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