十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 16

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……なんていう会話だろう。
……聞きたくない。
いつだって先生が引き受けてくれたことなんてないじゃない。
今まで一度として手伝ってくれた事なんてないじゃない。
なんて楽しそうなの。
それは……。
「それは私じゃないのよ!」
大きな声で叫んだ私の言葉は私の中で幾度となくこだまして、私の耳にだけ異様に響いた。
叫んだ声が収まる頃、私は私の中でただ呆然と暗い空間を眺めていた。
外から先生の授業の声が聞こえていたけどその声はただ、耳を通り過ぎていくだけの音で、自分の中に留まりはしない。
瞳を動かす事無く、まばたきだけをしていた。
外の時間の流れなど全く感じなかった。
いや、感じることが出来なかったのかもしれない。
何かが私の頭の中で鳴り響いて崩れていくのを感じ、私はその崩れていくカケラをくっつけようと必死だった。
私は今まで何をしてきたんだろう?
機嫌取り?
皆の反応が怖くって、自分を押し込めてきた。
争いごとがしたくなくって、嫌われたくなくって、一生懸命に自分の思いを押し込めて笑顔を作って皆の言う通りに、望むままに動いてきた。
でもそれは違うことなの?
分らない。
分らないわ。
何が正しいのか、自分は間違っていたのか、皆が間違っているのか……。
ふと、自分の頬に涙が流れているのを感じて、私は自分自身に嘲笑した。
馬鹿馬鹿しい。
どうしてこんな事で涙が出るんだろう。
たいした事じゃない……。そうよ、たいしたことじゃ無いわ。
平気なはずよ。
今まで色んなことを我慢してきて、傷つけられてきた。
体の傷じゃない、心の傷。
でも、それが何なの?
私は一度だってその傷から逃げ出したことは無かったし、泣かなかった。
傷ついたなんて口に出した事もない……。
それを口にすれば負けだし逃げだ。そう思っていたから……。
でも、この涙は一体何?
私はどうして、こんな所で泣いているの?
私は心の中の心と会話をするように自分自身に問いかけていた。

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