十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 18

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私は私の中にあるべき私の一部を封印したのだ……。
決して2度と、それが開いて「ダメだ」といわれないように、シッカリと何重にも鍵をかけて……。
……。
……。
……あ、もしかして。
そこまで想い出の封印を解いた私の中にひとつの考えが思い浮かんでいた。
私の考え……。
それが正しいのかわからない。
間違っているのかもしれない。
でも、声の起こす行動は全て私が封印してきた行動。
約束を破る母親に対して。
本心:どうして私の約束がいつも後回しなの!
建前:仕事だもん、私のためでもあるんだから我慢しなきゃ……。
用事を言いつける先生に対して。
本心:いつも私ばっかり。どうして私がやらなきゃいけないの!
建前:クラス委員長だもん、我慢して頑張らなきゃ……。
良い子であるためには必要だった。
【我慢】
その行動はいつしか私の一部になり、私自身、それが我慢なのか、それが普通なのかわからないほどになっていた。
(私は一体何をしてきたんだろう? 私の選択は……、間違いだった?)
「……それが間違いだとアナタが決めるなら間違いだったんでしょ?」
<……どういうこと?>
「また出た。どうして? ってアナタはすぐに私に聞くのね? 自分で考えなさい……。今までだってそうしてきたんでしょ?」
<今まで……>
「自分で考えて自分でこの場所に立って生きてきたんじゃないの? アナタは」
<それは……、わからないわ>
声がまるで私を何処かに導くように話し、私は静かにその声を聞いていた。
言い方は変わらない。
偉そうで、何もかも自分は知ってるのにアナタはわからないのね? と言わんばかりの言い様。
でも、私は今、それを腹立たしいとは思わない。
どうしてだろう?
静かに声の言う事を聞いていられる。
あれほど苛立ち、ムカムカと心の中が曇って、その言い方に傷ついていたはずなのに……。
そうか……。
今まで私は【今までの私】を中心においていたんだ。
今は――中心に【今までの私】は居ない。
誰もその中心には居ない。
だから冷静に見つめられる。
自分を……。
そう、私は、分らないんじゃない……、何も知らなかったんだ。
<私は私なのに……。なのに、全然自分を知らないんだ……>
「……フー、やっと気づいた? アナタって本当に鈍いんだから」
<そうよ、鈍いの、その鈍いのも私>
「クスクス、良いわ。アナタはアナタを見つめて、みなおしてみれば良い。知らない事は恥ずかしい事じゃない、隠す事じゃない。知らなかったのなら知れば良い、それだけよ」
<無知なのが恥かしいって思ってた。人に指摘されるのが嫌いだった。でも違うんだわ……>
声の声は私の考えに黙りこくってしまったが、私にはそれが返事に思え、私は私の思いを、気持ちを考え出した。
家の玄関にたどり着き、鞄から鍵を取り出して鍵穴に差し込んでみると、鍵はかかって居なかった。

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