十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 20

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カンにさわるけど、彼女の言う事はイチイチ正しい。
そうなんだわ。
彼女は【私】。【私以外の何者でもない】。
随分昔に封印してしまったけれど、彼女の言動は私の今まで押し込めてきた産物。
皆の反応が怖くって、嫌われるのが怖くって、ただ頷いてきただけの【素直な鈴】が押し込めてきた本当の反応。
だから、気づいてくれたのは嬉しいけれど、母が私じゃないと疑うのはおかしい事。
もう不思議ともおかしいとも、なんとも思わないわ。
だって、彼女は私なんだもの。
<お母さんは気づいてくれたけど、でも、やっぱり今までの私しか見てくれてなかったんだわ……>
「……だから? 母親を非難するの?」
<え?>
「母親だからと言いながら表面上の私しか見てくれてないじゃない。そう思っているんでしょ?」
<だって……、そういうことでしょ?>
「アナタは自分以外の何かを非難することはあっても、自分自身を見つめることはしないのね。最低だわ」
<な! 何よそれ>
「そのままの意味よ、よーく考える事ね。誰がそんな鈴を作り上げてきたのかを……」
誰が? 誰がそんな鈴を作り上げてきたのかって……。そんなの皆に決まってるじゃない。
私は皆の為に自分を押し込めて自分のやりたいこと、言いたいことを我慢してきたのよ?
私には声の、彼女の言う事が理解できなかった。
心の奥底に決して解けないようにと封印してきた様々な気持ち。
封印する事で出来上がっていった聞き分けの良い私。
……
あれ? そういえば、どうして私の封印は解けてしまったのかしら?
私が自分で解くはずが無い。
苦しい思いをするのはもう沢山! そう思って封印してきた私がわざわざ硬く閉めたその箱を開くはずが無い。
<一体何がきっかけで?>
「何ってことは無いわ」
<……別に、アナタに聞いて無いわよ>
「あら、他人行儀ね。私を自分だと認めたんでしょ」
<えぇ、認めたわ。確かにアナタは私よ。でも、私ではないのよ>
「……ふ〜全く小難しいわね。堅物って言ったほうがいいのかしら? まぁいいわ……、アナタが私を理解した時、その時がアナタがアナタになる時だから……」
良く言うわ……。
小難しくしているのはアナタでしょ?
そう言ってやりたいのを我慢した。
我慢……どうして我慢したのかしら?
私は私に言うんだから別に我慢する事は無いのに……。
そうだわ、私はどうして【我慢】するのかしら?
自分の中に自分の意識の一部を閉じ込める場所を作るほどに【我慢】するのかしら?
封印は解かれたはずなのに、どうして……。
「ふぅ」
深く呆れたような溜息が、外から聞こえてきた様な気がした。

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