十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

仮面屋 24

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<アナタは私だと思う。でもちょっと違ったわ>
「……違うって?」
<アナタは私の仮面だと言った。でもそれは違うでしょ?>
「何が言いたいのかわからないわ」
<フフッ、嘘つきね。まぁ、いいわ。アナタが私なんじゃない、私がアナタ。だから……、アナタが私の仮面なんじゃない。私がアナタの仮面だったんだわ……>
私の言葉に彼女は何も言わず頷きもせず、ただ……、ただ、耳を傾けていた。
<ねぇ、アナタはどうして仮面と言う言葉を使ったの?>
「あら、質問されるのね、聞いていればいいだけかと思ったけど。仮面、それはそのままの意味だからよ。特別何があったから仮面と言う言葉を使ったわけじゃないわ」
<そう……【仮面】。……仮面って何の事だか最初は分らなかった。お祭りの時にかぶるような何かだと思った。でも少し違ったわ>
「違う?」
<えぇ、それは見せかけの者なんだわ>
「見せかけ? ……フー、アナタがそんなに回りくどいなんて思わなかったわ」
溜息をついてそういう彼女に私はクスクス笑いながら答える。
<そう? そんな事は無いでしょ? アナタは私、私はアナタなんだもの。アナタも相当回りくどかったわよ?>
私の返事に彼女は少し苦笑いを浮かべた。
<見せかけ。私が良い子であるための皆への見せかけの顔と態度。それを形作っているのが私と言う仮面>
「アナタが仮面なら私は何だって言うつもり?」
<フフッ、アナタって本当にイジワルね。分ってるくせに質問して間違ってたら嘲笑うんでしょ?>
「イジワル? そうじゃないでしょ? アナタが訳のわからないことを言うからよ」
<……そうね、そういう態度をとる。それも私だわ>
彼女の行動の一つ一つに腹を立てていた私だったが、今はそんな彼女の行動全てが「それも私だ」と納得できるようになっていた。
<アナタは……、アナタも私の仮面。私の中にある、幾つもの仮面の一つ。でも、私の仮面とは違う。アナタがあって、私と言う仮面が生まれた。アナタは私と言う存在が出来上がることで生まれてしまった仮面。私と言う存在はアナタがあって初めて生まれることが出来た>
そう、彼女は私だといったけど、それは違う。
私は彼女と言う人物を覆い隠すため、彼女の存在を周りから見えないようにする為にかぶる仮面として生まれてきた。そう、私は考える。
良い子を演じるのは簡単なことじゃない。
だって、私は元々【良い子】という訳じゃなかったから。
母を困らせてはいけない。
友達をなくしたくない。
先生に良く思われたい。
そんな些細な事から私は私自身の本当の気持ちを【我慢】してきた。
彼女を面に出さない為に必死で彼女を隠して、仕舞い込んで。
その内に、意識せずに彼女をしまい込む事を覚えた。
何度か彼女は顔を出そうとしたけれど、その頃には私の仮面は完全に固く顔に張り付いていて、決して仮面がすり替わる事も外されることもなかった。
私の中に出来た私の意思。
それは本当の私を閉じ込めて、もうひとりの私を作り出してしまった。
「随分今までの考えから飛躍した意見ね……。びっくりだわ」
<そうね、でもそれが私の考えよ……>
私は静かにそう言うと、彼女に【答え】を示そうとした。
私がみつけた私の【答え】
正解であろうと無かろうとそれ以外の答えを出すつもりは無い。
間違っていればそのままでもいいとそう思える、納得した自分自身の意思で出した【答え】
深呼吸をし、言葉を発しようと口をあけた、その時、私の目の前には見たことも無い町並みが広がっていた。

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