十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

石屋 3

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やってられねぇ。
なんで俺が怒られなきゃならないんだ……。
なんで俺がたいした事のない人間どもの為に動かなきゃいけないんだ……。
俺を正当に評価しない、馬鹿共……、胸糞悪くなる。
いつも以上にムシャクシャしている俺が夜道をアパートへ向かって歩いていると、急に目の前が明るくなった。
夜もふけていたはずなのに、いつの間にか夕方の色に染まった場所で、そこは見たことのない十字路。
「……なんや?」
十字路には一軒のボンヤリと灯をつけた店があった。
俺がその店の前に立てば、カチャリと鍵が開く音がする。
「入れって事か?」
開いたその店の扉に手をかけて俺はゆっくりと店の中に入っていった。
(なんやねんここ……)
招き入れるように開いた扉の中に入った俺はその中の様子に唖然とした。
真っ暗で、ぼんやりと明るい部分は電気の光では無いような感じで、店の至る所には様々な色をした剣先のように尖った石がおいてある。
「いらっしゃいませ……」
不意に後ろから声をかけられ、思わずビクンと体を揺らして後ろを振り返った。
スラリとした細身で真っ白な肌、そして長い黒髪が印象的で、少し顔を隠すように編みこまれたレースの長いストールを頭からかぶっている。
思わず俺はドキッと胸を高鳴らせてしまった。
(ごっつい綺麗や)
そこに居た少しハスキーな声の主は、まさに俺の理想の女性。
つい、見とれてしまった俺に切れ長の目を半分閉じた状態で上目遣いに俺をストール越しに見つめ返してきた。女は、ニッコリと笑うと俺に部屋の中央に設けられている椅子に向かってゆっくり手をかざして座るようにすすめた。
動揺を見せないように必死で普通に歩いて椅子を引いて座る。
薄暗い部屋で、椅子が二つに円形の小さな机が一つ。
俺が座った椅子の机を挟んだ反対側の椅子にゆっくりと女が座った。

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