十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

石屋 8

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「……し、もし! もしもし!」
俺は乱暴に体をゆすられて眼を開けた。
そこは俺の家の近くの電柱横。つまりは道端だった。
俺をゆすっていた警官は俺の顔を覗き込むようにして眉間にシワを寄せて言う。
「こんな所で何してんねんな。大丈夫なんか?」
「あ、す、すみません……」
「気持ち良ぉ〜酔っ払うのは結構やけど、こんな所で寝とったら財布すられてまうで。所持品はちゃんとあるか?」
警官に言われ慌てて所持品を確かめ、全部あるとわかると警官は俺に再度気をつけるようにと注意をして去って行った。
「……こんな所で。アレは夢か?」
俺が呟くと俺の右腕からシャリンという音がする。
見れば右腕に女がはめた石が五つ……。不思議なオーロラ色の糸でつながってそこに存在した。
「……夢じゃなかったんやな」
俺はまだハッキリしてこない頭を振りながら自分の家へと歩き出した。
家といっても小さなワンルームのマンションの一室だ。
大学の為に親元を離れて暮らしている。
小さかったが俺の城であるには違いない。
郵便受けの中にある郵便物とあからさまに怪しい広告をとって、階段を登り、マンションの一番奥の部屋の鍵を開ける。
日中、締め切られたままの部屋はムッとして、俺はいつも真っ先に窓を開け放し、換気扇のスイッチを押した。
鞄をいつも通り机の横にあるフックにかけ、冷蔵庫から水出しの麦茶を、食器棚からガラスのコップを取り出してワンルームの真ん中に置かれたローテーブルにおいて茶を注いだ。
ゴクリと冷たい麦茶が喉を通っていき、胃にその冷たさを感じながら、右腕をゆっくりと上げて輝く石を眺める。
女は言った。
『貴方が本心から……、心の底から願った願いはこの石がかなえてくれる』
俺の願い……。
本当に叶うのか?
確かに不思議な輝きだが、そんな非科学的な事。ありえるのか……?
俺は自身が経験してきた事なのにもかかわらず、疑っていた。
実験。
そうだ、本当にこの石で願いが叶うのか……それを確かめてみればいい。
『願いは五つ叶う』
そう女は言った。
五つもあるのだ。
その一つを実験的に使ったとしてもあと四つある。
願いが叶うなら……、あとの四つに本当の願いを願えばいい。
(そうやな、実験やからな……)
俺は自分の右腕にある五つの石を左手で手首ごと包むように握り締めて願った。
「教授に……教授に俺は凄いと、俺のレポートを、俺の能力を! 才能を認めさせろ!」
瞳を閉じて暗闇の中、俺のレポートを否定した……、俺の才能をひがんで否定した教授の顔を思い浮かべ、俺は願った。
それこそ、心から「平伏せ!」と言わんばかりに。
パァァーーン
高くまるでロケット花火が空中ではじけるような音を立てて、五つの石のうち、濃い紫色で透明度の高い石が弾け飛び、オーロラ色の糸は弾け飛んだ石の部分を埋めるようにつながり、俺の腕から抜け落ちる事無くそこに四つの玉が存在した。

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