十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

石屋 14

イメージ



そうだ……。
いつだってそうだった。
一つ年下のクセに俺よりも人に囲まれ、俺よりも教授たちに大事にされている。
どう考えても俺の方が勝っているはずなのに……。
耳に嵐の声が届くほどに俺の苛々は益々大きくなっていき、取り繕っている作り笑顔はどんどんこびりついていった。
(コイツさえ。コイツさえこの世から居なくなってくれれば……、俺は!!)
俺がそう思ったとき、右手からピシピシと何かがひび割れる音が鳴り響いてくる。
(ま、まさか!)
俺は慌てて自分の右手首を見た。
残り三つのうちの一つ、濃い紅蓮色の石が自らの体にひびを入れている。
(ち、違う……。今のは願いじゃない……)
そう心の中で呟こうが何をしようがひび割れは更に大きくなり、周りの景色が陽炎のように揺らめき始めた。
(なんでや、なんでこんな! 強く願えば……。女はそう言うてたやないか……。今のは願いや無い。思っただけやのに!)
俺の叫びは虚しく自分の心の中でこだましている。
その間も石のひび割れは多くなり、周りの人々の時間は止まっていった。
(あぁ、なんでや。違う、違う……)
ピシッ!
ひび割れの甲高い音が一つ響いた次の瞬間。
パシ――ン!
まるで濃い血の色をした紅蓮の玉は大きく鳴り響いてその身を粉々に砕く。
あたりに赤く細かい破片が飛び散り、俺はただ一人それを眺めながら言い知れぬ不安が胸をドキドキとさせている事にまだ気付かずにいた。
空中に飛び散った石の破片はまるで血しぶきに見え、呆然とした空間に居た俺は徐々に自分の鼓動で覚醒していく。
(……強く願えば。そうか、思いと願いは同じだと、そう石は受け取ったと言うことやねんな)
冷静に、そう思って見たが、俺の願いがどう聞き入れられるのか……。俺は不安でしようが無かった。
この世から居なくなればいい。そう願った俺の思い。
それが何を意味さすのか、分っていながら俺は分らない振りを必死でしていた。

イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪
inserted by FC2 system