十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

石屋 22

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「かわいそうな人……己自身を過信して、なのに人をうらやんで……結局、己で己の首を絞めたのね。でも、全ては石に願った貴方の責任だわ」
女のその一言に俺は頭を抱えたまま女を睨みつけて怒鳴る。
「俺の責任?ふざけんな!アンタが色気を振りまいて、何の説明もせずに俺を惑わせて契約させたんやないか!詐欺もいいとこや!!」
そんな俺の怒鳴り声に女はフフッと嘲笑を浮かべた顔でゆっくりと俺を指差し言い放った。
「何でもかんでも人のせいにして、それで己が満足ならそれでも良いわ」
「なんやて?!」
「例え……私が色気を振りまいていたとしても、己を持っていれば契約などしないわ。そう、誘われて契約をしたのは貴方自身」
「そ、それは……」
「石が願いを叶えてくれる。その事実を知って、己自身の努力を怠り、石に身を委ねようと考えたのは貴方自身」
「や、やめ……」
女はゆっくりと人差し指を俺に近づけながら歩いてきて、俺はその雰囲気と言葉に押され、ジリジリと後ずさる。
「己の非を認めず、人に責任をなすりつけ、起こっている状況から逃げようとする……それも貴方自身」
「やめろ……」
「止めろ?また逃げるのね?分っているから逃げるんでしょう?そうよ、貴方の考えと心があって貴方自身がある。全ての行動は己の責任、そして己で償わなければならないのよ」
「うわぁぁぁああぁぁ!!!!」
女の1つ1つの言葉に俺の頭の中はかき乱されて、耳を塞いで俺は大きな声で叫んでいた。
俺の叫び声とその姿を見て、女は楽しそうにクスクス笑い、その姿を俺は睨みつける。
「フフフ、どうしたの?本当のことを指摘されるのが嫌い?ま、人間誰しもがそうよ」
「アンタ……最低な女やな」
「あら、ありがとう。私にとってはそれは褒め言葉だわ」
「なっ!」
「人って……大変ね。他人の言葉に左右され、そして、自分の首を絞める……言葉なんて受け取り方次第だし、何よりも人は全てをそのまま語ることは稀なのに、その一言に右往左往して……」
女の顔はフッと一瞬くもって見えた。
俺には女が分らない、女の言葉の意味も……
苦々しい顔をした俺を見つめた女はフーと一息ついてチラリと俺を横目で見て言う。
「仕方ないわね。特別サービスをしてあげるわ……ただし、勿論見返りは貰うわよ……」
「特別サービス?!サービスって何や!」
「それは、後で分るわ」
「見返りって。これ以上俺から何を取るつもりなんや」
「それも、後で分るわ」
女はスイッと白い手を俺の方へ伸ばし、ピンとつき立てた人差し指を俺の額に押し付け、フッと口の端をあげて微笑んだ。
「特別サービスよ……感謝しなさい」
そういった女の人差し指に体全体を押され、俺は背中に見える光の中へ押し出されて行った。

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