十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

石屋 23

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「……*!*#%$!!」
(……だ、誰かが……何か……叫んでる)
「……ぃ!おぃ!田所!!」
(田所……田所って?……あぁ、俺の事か)
呼ばれる声に意識が覚醒していくほどに体の痛みがわかり、俺は思わずうめいてしまう。
「ぅあ……ぅうっ!」
「田所!気が付いたんか?!」
俺の肩を揺さぶり、力強く掴むその腕の先を見ればそこには涙を流して俺を見つめる嵐がいた。
(嵐……何泣いてんねん)
「田所……すまん、俺を庇ったばっかりに……」
(庇った?……そうかそういう風に俺は事故にあったって事になってるのか)
ボンヤリと薄く開けた眼で嵐を見ていた。
涙を流しながらも口の端に笑顔をたたえたその顔に俺は押し寄せてくる嫌な思いを押し留める事ができなかった。
(俺がこうなったんは全部お前のせいや無いか!!)
大きな口を開けて大きな言葉でそういったつもりだった。
だが、俺の口から飛び出したのは低い唸り声。
「あぁぁう!うぅっ……」
何度、何かを喋ろうとしてもでてくるのは唸り声だけだった。
(な、何でや?!)
心臓が飛び出し繰るほどにバクバクと鼓動する。
予想もしなかった事が起こっている……どうして?!
混乱する俺の元に白い衣装に身を包んだ医者が近づき、そっと喋り始めた。
「あの大事故から、奇跡的に一命を取り留めましたが……しかし、声だけは」
医者は申し訳なさそうに、俺を痛々しい可哀相な人を見るような視線を送った。
(声が……でない)
「なっ!じゃぁ、田所は……もう喋れないって言うんか?!」
俺の代わりに嵐が医者の胸倉を掴んでそう言い、医者はその剣幕に後ずさる。
「お、恐らく言葉を発することは出来ないかと……手は尽くしたんですが」
「そんな!なぁ、何とかしてくれよ!」
医者にすがる嵐に俺は手を伸ばし、出ない声を一生懸命にだしてそれを静止した。
「ぁうぅ、あうぁっ!」
「田所!すまん!俺の……俺のせいや……」
涙を情けなくダラダラ流している嵐が、俺の手をとり、そのまま胸にうつぶせ泣き崩れる。
(違う、責めている訳やない)
どんなに声を出そうとしても、医者の言う通り、俺の声は言葉になる事はなく、獣のうめき声のように低く響くだけだった。

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