十字街

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

鏡屋 4

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「あ、あの……私……」
しどろもどろ言う私に彼はニッコリと微笑む。
(綺麗な顔……)
彼に綺麗なんて言う言葉は使わないかもしれないし、もしかすると失礼かもしれない。
でも、そういう形容詞が一番似合っていた。
まるで漫画やアニメの世界に出てくる人のようにサラサラとした銀髪やしっかりした碧眼に私は俯いたままチラチラと見るだけだった。
「俯いてばかりいるんだね?」
「え?!あっ……ご、ごめんなさい」
「謝る事じゃないんじゃない?」
「あ、えっと……ごめんなさい」
「クスクス、面白い人だね」
彼はそういってカタカタと椅子を私の横に動かし、ストント腰を下ろした。
私の右側にふんわりと温かい体温を感じ、そして白檀の良い香りが優しく漂ってくる。
俯いたままチラリと横に視線を向ければ彼の足がみえた。
私の足と彼の足の間はほんの数センチ。
(や、やだ……ドキドキしてきちゃったわ……)
彼の姿をチラリと見て私は美しいと思った。
そして俯いた。
自分とは違い、男性なのにとても綺麗なその姿を直視できなかったから。
でも、そんな私の横に彼が自分からやってきて今、真横に居て彼の体温を私は感じているんだ。
そう思うと私の心臓はドキドキした。
別に恋したわけじゃない。
元々男性に免疫が少なく、それに今までの男性は皆私をグズでブスといって相手にしなかった。
そう、私はグズでブス……
化粧の仕方も知らないし、やらない。
男性と楽しい会話なんてできない。
あまり食事をしないから痩せてはいるけどプロポーションが良いわけじゃない。
学生時代のあだ名はいつだって【ゴボウ】だった。
だから、別に何も思っていないけれど、異性が横に来るだけで、横に居るだけで私はドキドキして、余計に何も喋れなくなってしまう。
聞きたい事が沢山あるのにもかかわらず、私はモジモジとその場で俯いて何も言い出せずに居た。
すると、太腿に置いていた私の手に彼の手がソッと重ねられ、数センチ向こうにあった彼の太腿が私の太腿にピッタリとくっつく。
「ヒャ……な……」
フワリと感じていた彼の体温はジンワリとそしてしっかりと私に伝わってきて私の口からは声にならない声がでた。
本当は「なんですか!?」と言ってしまえば終わりなのに、そんな言葉は一向に出てこない。
あぅあぅ言いながら私は体を離してしまう為にとっさに立ち上がろうとした。
「あっ!」
立ち上がろうとした私の腕を思いっきり彼は私が行こうとしている方向とは違う方向に引く。
次の瞬間、私は彼の腕の中に居た。
私がバランスを崩した途端、まるで彼はそれをねらっていたかのように体の向きを変え私を抱え込んだのだ。
彼の腕の中に吸い込まれるように倒れこむ時、私は彼がニヤリと笑った様な気がした。

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