ma・ke・ko・i 〜負恋〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

36歳の憂鬱 3

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朝は早めに出勤。

丁度良い時間帯の電車は快速電車だけれど、私に丁度良いと言う事は他の皆にも丁度良いと言う事。
まさに鮨詰め状態。混雑していて変な体勢で乗り込めば、そのままの形で目的の駅まで行かなきゃならなくなる。
以前はそれに加えて痴漢なんていうのにもあっていた。
だから、少し早めに我が城を出て、普通電車でゆったり座席に座って出勤する。
朝の布団の中でのまどろみ時間が少なくなってしまうけど、早めに出勤して近くのコーヒー店でゆっくり朝のコーヒーを飲むのも悪く無い。
電車に乗り込むと少し歩いて開いている座席を探す。
前まではね、座るなんて事は考えもしなかったんだけど、どんなに若ぶってみても年は年なのかしら?
シルバーシート以外の座席を見つけて、腰を下ろし、文庫本を取り出す。
最近は携帯電話やゲーム機とかで小説や物語を読めるらしいけど、会社で散々液晶とにらめっこしているのに通勤途中にまで液晶画面を見る気にはならなかった。
「あ!佐藤先輩!」
少し心地良い電車の揺れに身を任せていると、少し高めの可愛らしい声が聞こえて目の前に影が出来る。
「ん?あら、如月さん。貴女もこの電車?」
「前までは違ったんですけど、ほら、前、お昼に佐藤先輩が言ってたでしょ?この時間だったら満員電車で窮屈な思いをしなくて良いって。だから真似しちゃった」
フフッと笑って小さく舌を出す彼女は、入社3年目で、新入社員の頃から私が面倒を見てきた女の子で如月舞。
私とは正反対に全ての仕草が可愛らしい、男性社員の彼女にしたい女性社員ランキングの上位に何時だって入ってる子だった。
私は……鬱陶しい女性社員ランキングに入ってるでしょうね。
文庫本を閉じてバッグにしまい私は彼女のおしゃべりの聞き役に徹した。


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