ma・ke・ko・i 〜負恋〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

36歳の憂鬱 5

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「佐藤先輩?私、何かおかしいこと言いました?」
「ぅうん、おかしい事なんて何も言ってないわ。ただね、私にしてみれば貴女の方がずっと羨ましい」
「え?私ですか?」
「そう、貴女よ」
驚いて目を見開いている彼女の顔を見つめて久しぶりに優しく温かい心でクスッと私は微笑んだ。
「女課長、出来る佐藤先輩が私の事羨ましいだなんて、冗談は止めてくださいよ」
「あら、冗談なんかじゃないわよ?」
「またまた〜」
ケラケラと楽しそうに笑う彼女は、本当に冗談だと思っているんだろう。
私はエスプレッソを一口喉に流し込んで、カップを置き、指でカップの縁をそっとなぞって呟いた。
「本当に……貴女の可愛さが羨ましい。どんなに転んでも努力しても、私にその可愛さは似合わないもの……」
飛び出してしまった思わぬ弱音と本音。
26歳と、私と10歳も違う若い彼女に対する羨望を、その本人に言った所でどうにもならないのに、何故か今日の私は彼女にポロリとこぼしていた。
(きっと、呆れてるわね)
フゥと溜息を1つついて、エスプレッソをもう一口流し込み、彼女の方を見てみれば、両手でオレンジジュースのガラスコップを持ちながらストローを咥えて私をジッと見つめる彼女がいた。
少しきょとんとしたその表情や仕草がやっぱり可愛くて、私はホゥと心の中でまた溜息をつくのだ。
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