ma・ke・ko・i 〜負恋〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

今時の… 1

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昼食が終り、退社時間になれば、私以外の女子社員の殆どは帰ってしまう。
如月の口から再びこの話題が上がる事は無く、かといって、そっけないわけでもない如月の態度に少々どう対応して良いのか分からなかったが、如月が帰り支度をしてから私の前に現れ、フフンと笑った。
いかにも何だか自慢げそうな笑いに、付き合うつもりで聞いてみる。
「何?どうかした?」
「へへぇ〜私、これからデートなんですよ〜」
如月の口から出てきた答えに(やっぱりね)と思い、フーっと息を吐いてニッコリ微笑んで答えた。
「そう、良かったじゃない。で、相手はどんな人?」
「IT関連の仕事をしてて〜カッコイイんですよ」
「……例のサイトで知り合った人?」
「はい!」
「じゃぁ、カッコイイかどうかなんて分らないじゃない。あそこって似顔絵みたいな決められた絵しかないから、殆どの人が同じ様な、ちょっとカッコよさそうな似顔絵を使ってたじゃない?」
「まぁ、そうなんですけどね。だからこそ、会ってみないとわからないじゃないですか」
そういう如月の言葉に私は苦笑する。
私の場合は『だからこそ、会えない』に変換されるから。
そう思っていた私の顔を如月が覗き込んできた。
「……もしかして、先輩って、私よりも面食いだとか?」
「そ、そんなことはないけど……」
「そうですか〜?何だか顔にこだわってるみたいに聞こえたんだけど……」
「人を顔で判断したりはしないけど、やっぱり嫌いな顔ってあるでしょ。それに会って見て嘘つかれたとかも思いたくないじゃない」
「いいじゃないですか。違うって思ったらその場でごめんなさいって別れちゃえばいいんですから」
「はぁ?だって、その人にする!って感じで会うんじゃないの?」
「アハハ!違いますよ〜先輩やっぱり古い〜会うのはその中の1人ですってば」
もう一度言われた『古い』って言葉にカチンともきたけれど、何より気になったのは『その中の1人』って言う言葉。
「その中の1人って……やり取りを沢山した中で選んだんじゃないの?」
「違いますよ〜。なんかいかやり取りして、会いたいなって思ったら付き合うとか云々の前にあっちゃうんです」
「あっちゃうんです……って、そんなお気軽な」
「やだな〜先輩。そういうもんですよ?」
「で、でも相手が本気だったらどうするの?相手に悪く無い?」
「無い、無い!相手にもそのつもりでいてもらえば何の問題も無いじゃないですか。それに、こういうのは早めにやっちゃったほうが傷が浅いんですよ。相手も、私も」
ケラケラと笑って言う如月に、やっぱり私は古いのかしら?なんて思って仕事に戻る素振りを見せると、如月は「じゃぁ、行ってきま〜す」と軽やかに部屋を出て行った。
節電の為、数本の電灯を残して、あとは消された少し薄暗い部屋の中、私はこうこうと光る液晶に向かって仕事をして数時間。
職場の時計の短い針が11時を指そうとしたとき、とりあえずの仕事のかたがついて、私はパソコンを閉じる。
「ふぅ……今日は少し早めに済んだわね」
ウーンと大きく両腕を天井に向けて伸びをし、肩に手を置いて首を捻りコキコキと音を立て、腕を回して肩をほぐす。
「……今日は気疲れもあっていつもより余計に肩が凝ってるわね」
独り言に溜息をつき、デスクをある程度片付け、部屋の電気を全て消して私は会社を後にした。



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