ma・ke・ko・i 〜負恋〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

今時の… 3

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電車から降りてカツカツと背筋を伸ばし、早足で歩いていく。
どんなに疲れていても、ついつい早足になるのは、社会人になってからついてしまった私のクセ。
「サラリーマンと言うのは1分1秒でも無駄に出来んぞ!」
そんな大先輩の言葉をずっと守ってきた私の足はいつの間にか駿足になっていた。
家に着けば、その足もペタペタとゆっくり歩く鈍足になって後はいつも通り。
シャワーを浴びて、ホッと一息。
今日は冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
とことん体も精神的にも疲れたときの私の栄養剤。
発泡酒の時もあるけれど、疲れが最高潮でもうどうしようもないわって時はとっておきの黒ビールを飲む。
4口、息継ぎ無しで喉に流し込んで、プハーと息をして、フーって気持ちのいい呼吸をする。
親父臭いなんて思っても気にしちゃいけない。だって、誰も見てないんだから気取る必要は無いもの。
ツマミは帰り道にある行きつけのコンビニで買って来たコンビニ弁当。
最近ではコンビニも色んな種類のお弁当が出ている。
パスタやサラダ色々あるけれど、さすがにそればかりの生活だと何もかも結構同じ様な味に思えてま、どれでもいいかと思ってしまったり。
そりゃね、そんな風に思うのは開発者の人にはとっても悪い事だと思うわよ。
そんな事をいうくらいなら自分で作れば……そんな声も聞こえてきそうだし、実際自分でもそう思うけど、それは無理。
料理が下手だというわけでもないし、やろうと思えば作れるわよ。でもクタクタになって、家に帰って来て、たった一人の、自分の為に食事を作る気力がどこにあるだろう?それでもやってるって言う人が居たら、どんな人であろうとも、それだけで尊敬だわ。
そんな私だから冷蔵庫の中は飲み物が殆どで、食べるものって言うのは無い。
あっても多分腐らせちゃうし、エコよエコ。
行きつけのコンビニだって私が来なかったら心配するかもしれないじゃない?

空き缶と空になったコンビニ弁当の容器を流し台において、自分の部屋に行きゴロリとベッドに横になる。
いつもならこのまま寝ちゃうところだけれど、私の視線はチラリと横に流れた。
視線の先にあるのはノートパソコン。
のそり、のそりとだらしなくベッドからはいだして、ノートパソコンを抱えてベッドに戻る。
「別に何かを期待しているわけじゃないのよ。うん、ただ、ちょっと見るだけ」
そう言って開いたパソコン。
まね、我ながら中々の言い分けっぷりだと思うけど。
サイトに行ってみれば、この間ことごとく断わったせいだろうか、来ていたメッセージは3通。
そのうち2通は前回断わったにもかかわらず、食い下がってきたつわもの。
「……なんだ、意外に積極的なのもいるのね」
この前はプロフィールも見ないで、一度書いた理のメッセージをコピー&ペーストして返していたが、さすがに断わったのに食いつかれると気になる。
メッセージにあるその人のニックネームをクリックすれば、その人のプロフィールが画面に別窓で開いた。
1人は私より2つほど年上の、福祉関係の会社員。登録されているニックネームは『クニオ』。
もう1人は私より5つも年下のエンジニアで、ニックネームを『タツヤ』と言う。
「……物好きね」
そうつぶやいた私だったけれど、やっぱり少しドキドキしていた。





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