ma・ke・ko・i 〜負恋〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

今時の… 4

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他愛の無い返事、でもそれを書くのが思いのほか大変で、私はうーん、うーんと珍しくうなりはじめる。
少しの警戒心がそうしているのもあったが、何より、仕事以外での男性とのやり取りなんて何年ぶりだろうって感じだから何を書けば良いのか分からない。
仕事の書類なら手が自然とキーボードをたたいているのに……そんなことを思いながら当たり障り無く相手を探った。
年齢や職種は必須事項で書き込みがあり、後は自由記入で趣味や長所短所が書き込まれている。
ある程度のことはそこで分かっても、やっぱりインターネットとはいえ【人付き合い】。分からないことだらけのまま、気軽に付き合うなんて私にはできなかった。
私の質問にしっかり答えてきたのは年下の『タツヤ』という男の子で、『クニオ』という年上の人は自分の話がメイン。私の質問には少し答えて後は自分のことをとにかく話したがる人だった。
それはそれで、こちらから何も言わなくても相手のことがわかるのでよかったが、実際の人物像が何となく想像出来るような気がする。
数回のメッセージのやり取りをしたのち、私は今日はと挨拶をしてパソコンを閉じた。
パソコンを閉じた瞬間、私は意識せずフゥと息を吐く。そして、肩の力がゆっくり抜けていくのを感じた。
「……やだな。柄にもなく緊張したりして」
今頃力が入っていたことに気がついたことにも驚いたが、何事にもあまり緊張をしなくなってきていた私が久しぶりに、しかも、顔も見えない、どんな相手かもわからない男の人との話で緊張してしまっていた事に一番驚く。
胸がドキドキと少しいつもと違う鼓動を響かせていることに気がついたのも今更。
全く、どれだけ恋愛免疫が低下しているのだろうか?
そんなことを思いながらベッドに向かおうとした私の背中で携帯電話が鳴り響いた。
「こんな夜中に誰だろ?」
サブ画面を眺めて思わずため息が飛び出す。嫌な上司の電話番号に気合を入れなおして嫌々と受信ボタンを押した。
「もしもし、佐藤です」
「夜遅くにすまないね。実は来週の取引の件で…」
できない上司を持つと部下は苦労する。だから自分だけはそうならないようにと仕事のできる上司であろうと思えば、私より上の連中はできる部下を持つと仕事をしなくなる様子。
何かあればすぐに電話をかけて「あぁしろ」だの「こうしろ」だの命令だけは迅速に対応。
逆らうつもりもないし、やらないつもりも無い。しっかり仕事はこなさせていただきますが、この時間にかけてくるなんて、ちょっと非常識。いくらダメな上司でもそれくらいは分かりなさいよ…と少し沈む心の中で怒鳴っていた。
仕事の用件を聞き終わって、通話を切ってすぐに携帯の電源を落とす。
「家に帰ってきてすぐに電源切ればよかったかな…」
久しぶりに生まれた新鮮な感じがいっぱいのドキドキが上司の声であっと言う間に遠退いたことに私は少し落胆しているようだった。




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