雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

私は私? 4

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昼食時間になり、皆が仕事を途中で切り上げて、食事に向かう。
部署が変わって、そこに馴染めていない私と一緒に食事に行こうと誘ってくれる人もおらず、私にしても既に出来上がっている女子グループにニッコリ笑って「仲間に入れて〜」なんて言いたくなかった。
私は、学生の頃からずっと、なんだか変な仲間意識で繋がっている女のグループは嫌いで。
そのせいもあって、この会社に入ってから出来上がっているグループに入ろうとも思わないし、そういうグループをつくろうとも思わない。だから、何時だって1人。
今日もいつも通り私は1人で食事に出かけた。
とはいっても、なんだかフラフラするし、熱が出てきたようで食欲も無い。
元々そんなにガッツリ食事をするほうで無いとはいえ、熱が出ると余計に食事をしようとも思わない。
しかし、食事をしないで居れば余計に風邪菌に負けそうな気がして無理やりにでも食事をしようと出てきたのだ。
「……出るの止めておけばよかったかな」
なんて後悔しながら、いつもの喫茶店に向かおうと路地へと入ろうとした瞬間だった。
クルリと体を方向転換させたのが悪かったのか、頭の真ん中辺りがグラリと揺らされた感じがして、そのまま私は貧血を起したようにその場に倒れこむ。
頭が働かず、とっさの動きも出来ない。
何かを掴めばいいし、手をつけばいいのに、それにすら考えの行かない状態で倒れた私の頭の中に浮かんだのは(ヤバイ、顔面が……)というつまらないものだった。
次の瞬間、私の体にガクンという衝撃がやってきて、地面へと向かっていた体が途中で止まる。
(あ、あれ?何?)
斜めになって止まった私は、自分の背中に翼でも生えたんじゃないかと思うようにフワッと体が宙に浮き、そのまま静かに着地する。
(ど、どうなってるの?)
着地して地面に踏ん張ろうとしたが、足が絡まって、倒れた先には温かい壁があった。
私の右側にあるその壁は私が体重を預けてもソコにあって、暖かさを手で確かめ、そっと上を見てみればボンヤリとした視界に彼の顔が現れる。
「……っ!」
彼の顔を確認し、彼であると脳が判断して数分後、私はバチッと瞳を見開いて、彼から体を引き離した。
(どうして?!)
彼がどうしてココに居て、私の体を支えているのか分らず、思わずとってしまった行動だったが、頭で考えた行動は体にまで綺麗に指令が行き届かず、再びフラッと倒れそうになる私の体を彼が力いっぱい引き寄せる。
「ぁうっ!痛っ……」
彼につかまれた腕が痛くて思わず声を出したが、かまわず彼は私を自分の胸の中に閉じ込めた。
「……まったく、君は何時でも無茶をする」
「(何時でも?)」
「心配して戻ってきてよかった」
「ご、ごめんなさい……」
会わせる顔が無い。そう思っていたけれど、彼の声を聞いて自分でも意識しないままに私は謝る。
「……熱があるじゃないか」
「う、うん……ちょっと風邪ひいたみたいで」
「早退は?出来ないの?」
「出来なくは無いけど……」
「じゃぁ、早退するんだ。いいね?」
なんだか少し強引に行ってくる彼に私は勢いに押されるままに頷いた。


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