雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

策士?な彼 1

イメージ


会社を出て、駅へ向かう道で中々腰に捕まってこない私に痺れを切らしたのか、彼はグイッと私の肩を抱いて引き寄せた。
熱でフラフラしているし、そりゃ捕まるものがあれば楽なんだけど。
でも、今、彼に甘えるのは何だか複雑な気持ちで私は彼に捕まらなかった。
彼に捕まる事が嫌なんじゃない。
ただ、なんだか自分で自分が許せないようなそんな感覚。
しかし、彼は私を引き寄せ、無理やりにでも私に腰をつかませるつもりのようで、私は少し彼の体に腕を突っ張る。
「……本当に、大丈夫だから」
全然大丈夫じゃないのに、彼に捕まらない為に嘘をついた。
『君は嘘つきだから』そういった彼の言葉通りな自分に心の中で苦笑いをする。
嘘つきで、天邪鬼。
そんな私に彼は首を絶対に縦には振らない。
どうすれば良いだろう?考えると少し溜息が出る。
すると彼は歩みをピタリと止めた。
肩をつかまれているので急に止まられるとカクンと体が不自然に停止して、こけてしまいそうになる。
「わ!何?」
私がそう聞くと、彼は静かに言った。
「……そんなに僕と一緒は嫌?」
「え?何を……」
「僕が、君を傷つけたから?」
何を言い出したのかと彼を見上げて私はびっくりする。
とても悲しげに少し潤んだ瞳がソコにあったから。
「ちょ、ちょっと……どうしたの?」
今にも泣き出しそうなその顔に驚いて言えば、彼は顔をコチラに向けたまま視線だけを私からそらし、ポツリと呟く。
「君が僕を避けているような気がするから……」
彼の呟きに思わず目を見開いてしまった。
まるで子供みたい。
そんな事だけで泣きそうになってるの?そう、私はその時そう思った。
だって、私と年齢も変わらないだろういい大人が少し相手にそういう態度を取られただけで泣きそうになるなんて信じられない。
第一、出会って間もない私に対してだと言う事もに驚く……。
「避けてる訳じゃないわ……ただ、貴方にどんな顔をすればいいのか分らないだけよ」
「どんな顔をすればって?」
「だって、あの時、貴方から逃げてしまったのは私だもん。暫くは会えないと良いのにって思ってたくらいだし」
「……やっぱり避けてるんじゃないか」
「だから、そうじゃないってば……」
「違うって言うなら、家に送るぐらいはさせてくれるよね?」
なんて表現すればいいのか、熱の出ている頭では考えがまとまらず、悩んでいると、彼がそういって、私は考える面倒さもあって「うん」って了承してしまった。
私が了承した途端、フフンって笑った彼の顔を見て、私はそれが彼の策略だったと気づいたが、後の祭り。
仕方なく私は彼の腰に捕まって、彼を道案内しながら自分の家へと帰宅したのだった。



イメージ上へ
イメージ イメージ イメージ

web拍手 "

応援ヨロシクです♪
inserted by FC2 system