雪華〜コイスルヒト〜

<Sweet Orange Story

  Life めぐり会う言霊>

策士?な彼 4

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私が目を覚ましたのはスッカリ辺りが暗くなった時。
パサリとおでこから落ちたタオルを手に取り、いつの間にか氷枕になっていた枕から頭を放し、上半身を起こす。
「……今、何時だろ?」
部屋の中は薄暗く、おそらくかなりの時間が経っていると分った。
明かりのない状態では壁にかけている時計も良く見えなくって、携帯電話はおそらくかばんの中。
それでも自分の部屋だからどんなに暗くても何処にドアがあるのかは分っているのでベッドから立ち上がり、ドアに向かって歩く。
良く寝たのと、冷やしてくれていたおかげで重たい体は少し軽くなっている様な気がした。
扉を開けて、リビングへ行ったがシンと静まり返って真っ暗。
壁にある電気のスイッチを押す。
パッと明るくなった部屋には人の気配は無かった。
「……帰っちゃったの?」
風邪のせいだろうか。考えてみれば帰ってるのは当然のことなのに、何故か私は心細くなる。
まだ熱が抜けきっていない体。さっきまで少し軽いと思った体が何だか少し重く感じ、いろんなものに掴まりながら狭い部屋を歩いて彼の姿を探した。
しかし、何処にも彼の姿は見つからず、ハァハァと息切れをしてリビングの床に座り込むと、リビングの中央においている小さな机の上に置いた覚えの無い白い紙が置いてあるのが見え、四つん這いで机に近づいて、紙を手に取る。
【みぞれへ】
私よりもずっと綺麗な字で書かれた彼の置き手紙。
呼び捨てにされている私の名前に一瞬ドキッとした。
【目を覚ましたら、台所におかゆを作ってるから温めて食べて、薬は必ず食べてから飲むこと】
さっき家中を歩き回った時に、台所のコンロの上に確かに片手鍋が置いてあったからきっとそのことだろう。
「料理も出来るなんて、器用な事で……」
私がおかゆを作るとすれば、きっと炊飯器にお任せするにきまってる。そんな事を考えながら手紙に視線を戻した。
【明日になっても治ってなさそうだったら必ず病院に行くこと】
「……もぅ、わざわざ言わなくっても子供じゃないんだから行くっての」
【玄関の鍵をかけたら、ドアのポストに入れておくから後で回収してね。できれば手紙を呼んだらすぐにね。忘れないうちに】
「そっか、鍵をかけてポストに入れて帰ったのか」
【あぁ、それと、明日は無理だったら会社には行かないこと】
「本当にどれだけ私を子ども扱いするんだか……」
彼の手紙の一言一言にそう呟いて溜息をついた私だったけれど、彼の言う通り忘れないうちにと鍵を回収に向かい、台所に行っておかゆを温める。
台所から自分の部屋を眺めてみれば、スッカリ綺麗に片付いている事に気がついた。
「……掃除までして。本当に器用ね」
スッカリ冷え切っていたなべの中のおかゆは中々温まってくれず、私は台所の床にへたり込む。
腰を下ろし頭上にあるガスコンロをボンヤリと見つめて私は彼の事を思っていた。



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