疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

弟「司」 3

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司が我が家にやってきたのは私がまだ12歳。小学6年の頃。
司は6歳になったばっかりで、私とは6つ離れていた。
可愛らしい男の子は母の足に隠れて私をのぞき見て小さく
「はじめまして、お姉ちゃん」
って言った。
その時は、母から
「司ちゃんは親戚から預かったの。今日から一緒に住むのよ」
としか伝えてもらえなかったけれど、中学生になったとき、父と母に呼ばれて親子三人だけで話をした。
「ねぇ花梨。あなた、司ちゃんの事どう思う?」
「ど、どうって……可愛いと思うよ」
「弟にしたいって思ってくれる?」
遠まわしに言う母に、父が横から口を出す。
「……司をウチの養子にしようと思っている」
「え?」
「だいぶんウチにも慣れてきてくれたし、司も私たちを家族と見てくれているようだし……」
「ちょ、ちょっと、何なのよ急に。それに司は預かっただけって」
「預かったと言うのは本当だ、遠い親戚でな、頼る人が居ないと預けられたんだが……」
「ついこの間、亡くなったのよ」
小さく言う母の姿に、私は何も言えなくなってきていた。
だって、そんな事言われて反対なんて出来ない。私が反対すれば司は一人ぼっちで施設に預けられるんだもの。
「わかった、司がそれが良いって言うんだったら私はそれで良い」
そう答えるのが精一杯だった。
後で聞いた話では、その無くなった親戚と言うのは自殺だったらしい。
司を両親に預け、うまく行ってると知り、自分は生活苦の為に自殺した。
なんて勝手な親だろう、聞いたときは何も言わない司の変わりに憤慨したのを覚えてる。
いつも傍に居たから知ってる。
司はいつでも母親を待っていた。自分を迎えに来るって待っていた。
なのに勝手に死んでしまうなんて……
でも、今思えばそれも親の愛だったのかもしれない。
愛してるからこそ手放して、愛してるからこそ死を選んだのかもしれない。
それから司は私の【弟】になった。
可愛くて控えめで、何でもできる弟はいつでも皆の中心に居て笑っていた。
何時からだろう?そんな司を見ると何故か胸にモヤモヤした物が立ち込めてきてイライラした。
はじめは人気者の司に嫉妬しているんだと思っていた。
自分より何でも出来て、親に褒められ、それでも控えめな司に自分に無い物を求めてイライラしているんだと……
でも、それが違うとはっきり確信したのは司が中学2年になった時だった。
 
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