疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

愛しさ故 7

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暫くして、私は転勤となった。
期間限定の転勤。
会社が募集した転勤に私は率先して手を上げた。
そのときは家に帰ること、家に居る事が私にとって苦痛そのもので、そんな私にとっては好都合の転勤だった。
会社の寮に入る事になり、ある程度の家具などはそろっているから自分で用意知ることもいらない。
着替えと必要な日用品だけを用意して、司が学校へ行っている間に家を出た。
転勤になるってことは両親には言っていたが司には教えていなかった。
両親にも口止めをして、私が居なくなってから説明してくれるように頼んだ。
首をかしげていた両親だったが、何かあると感じ取っていたのか、深い理由も聞かず承諾してくれた。
宅配便を集荷に来てもらって、その後、ボストンバッグを持って家を出る。
心が痛かった。
司にだまっていくからじゃない。
どんなに顔を合わせ辛くても、やっぱり司の姿を見れなくなるのは辛い。
嫌いだから出て行くわけでも距離をとるわけでもない。好きと言う気持ちを断ち切る為にでていくようなものだから。
「ふぅ……」
駅のホームで1人、椅子に座って電車を待って居る時、意識せず溜息が漏れ出した。
「そうね、分ってる……私の勝手……身勝手だって……でも」
「でも……何だって言うんだよ……」
呟く私の言葉に重ねるように低く怒ったような声が聞こえ、俯いていた私はハッと顔を上げる。
そこには、学ランを脱ぎ捨て、シャツの前のボタンを数個外し息を切らせた司が仁王立ちしていた。
「司……ど、どうして?」
驚いて見つめる私に司は紙を突き出す。
それはクシャクシャになっている私の辞令の書類。
「それ……」
「花梨の部屋のゴミ箱で見つけた……」
「勝手に……入ったのね?」
「花梨が、この所様子が変だったから。ごめん。でも、まさか、今日出て行くとは思わなかった……」
「……授業は?」
「コレ見つけたときからサボってるよ……何時行くかわかんないんだ。授業どころじゃない」
スッと視線をそらし、顔を下に向けた私の両頬を熱い大きな両手で包み込んで司はしっかりと私の顔を自分の方へと向けた。
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