疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

失望 1

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出張先で私は毎日溜息の日々を送っていた。
実家への電話はしていたがその電話に司が出ることは無く、そして、私も司を呼ぶ事はなかった。
ただ、母からは司の近況が報告されていた。
「学年で一番だったのよ」
「○○大学は確実だって」
そんな報告をする母の声はいつだって嬉しそうで弾んでいた。
そりゃそうよね、自慢の司ちゃんなんだから。
ところがある日、電話に出た母の声が沈んでいた。
気になって、止めておけば良いのについ「どうしたの?」と聞いてしまった。
母は一瞬戸惑ったが、小さな声で受話器に話し出した。
「そりゃね、もう年頃だしそう言う事に興味を持っても仕方が無いんだけど……パートがいつもより早く終わって帰ってきたら、その……声がしたのよ……」
「声?」
それを聞いて私の心臓はドクンと大きく鼓動し始めた。
まさか……そんな思いが湧き上がる。
「女の人のね……いやらしい声がしたのよ。母さん、司がそんな事するなんて夢にも思ってなかったからビックリして……」
やっぱり!私の予想は的中し、心臓が激しく暴れだす。
「それで?母さんはどうしたの?」
「そ、そんな事……誰にも言えるわけないでしょ?父さんに言ったりしてごらんなさいどうなる事か……」
「そうね、殴るだけじゃすまないわよね……」
「でしょ?はぁ、もう母さんどうしたら良いのか……」
「相手は?学校の子?」
「違うのよ……最近来てもらっている家庭教師の大学生でね。あんなことをする女性には見えなかったのに……花梨の部屋のベッドの上で司の股間に跨って腰を振ってるんですもの……」
「ちょ、ちょっと待って!私の部屋?」
「そうなのよ……もうびっくりしちゃったわ」
私は自分の頭の中が真っ白になって更に熱く燃えていくのを感じた。
よりに寄って自分のベッドの上でそんな事を司がするなんて……
「酷い……」
思わず呟いた一言に母は同調するように言う。
「でしょ?母さんも裏切られた感じがして……。かといって誰にもこんな事相談できないじゃない?ねぇ、花梨どうしたら良いかしら?」
私には司のその行動は『裏切り』では無く『あてつけ』に思え、つい口に出した『酷い』だったが母にそれが分かるわけも無く、ただ溜息を付く母に私は湧き上がる黒く澱んだ感情を表さないようにしていた。

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