疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

失望 4

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「フフ、何それ、今流行ってるの?」
「ち、違います!本当に……好きなんです」
「……止めた方が良いわ、私なんて」
「そ、そんな!僕の事が嫌いですか?」
「嫌いも何も。私は貴方の事知らなかったんだもの」
「僕は……僕はずっと見てました!花梨さんだけをずっと。だから…資料室に入っていく花梨さんをみて思わず僕も……」
隣に座って顔を赤らめて言う彼の言葉に恐らく嘘は無いんだろうと私は思ったが、今はそんな事を考える気にすらならならなかった。
「思わず……後をつけてきたのね」
傷つけないように、そんな配慮をしている心の余裕は全く無い。
私の中にあったのは司の酷い裏切り行為に打ちのめされている心と、そうさせてしまった自分の行動への後悔。
フッと溜息交じりの嘲笑を自分自身に送った次の瞬間、私は何だか温かいものに包み込まれてしまった。
「すみません……でも、好きなんです。花梨さんが……」
一瞬何が起こったのかわからなかったが、耳元で囁かれた低いその声に自分が彼の腕の中にいるのだとそう理解した。
年齢のせいか、私よりもずっと幼いイメージでいた彼だったが、私をすっぱりと包み込んでしまうその体はまさに男の人そのもので、私は思わず戸惑ってしまう。
突き放してしまえば良い、そう思ったが、包み込まれる温かさに不覚にもその体を預けてしまった。
暫くの間、私を抱きしめていた彼は、そっと私の耳にゆっくりと唇を落とし、そのままその唇を私の頬へ移動させる。
つかれきった私の心はその動きを静止する事無く受け入れ、唇と唇が重なり合った。
「んぅ……」
柔らかい感触は初めは触れ合うだけだったが、徐々にそれは私を激しく求める。
「ふぅん……ん…んン!」
彼の舌が私の唇をこじ開けて中に入り、私の口の中で私の舌と絡み合う。
しっかりと頭の後ろで彼の手に固定され、私は求められるまま、彼に私の体を預けていた。
資料室に唇同士が重なり、離れ、そしてまた重ねられる音が響く。
その音を私はどこか他人事のように耳にいれていた。
今さっき告白されたばかりで、コレといって知っているわけでは無い彼を当然のことながら好きではない。
無理やり開いての唇を奪いさる強引な行為も好きでは無い。
でも、私はその行為に身を任せる。
司へのあてつけであり、そして、自分の体が彼に汚されていく、その行為こそが私にふさわしい罰の様な気がして、私の名前を荒い息をしながら呼ぶ彼の声を聞きながらボンヤリと彼の顔の向こうに見える資料室の壁を眺めていた。



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