疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

過ぎし恋 14

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大きめの車とは言え、その小さな後部座席の空間で幾度、私と雄介は交わっただろう……。
様々な体位で交わった私達は、雄介の携帯電話の音で現実へと引き戻される。
次期社長と言う立場にいる雄介が会社に居ない事など、そう珍しい事では無いので会社からの電話ではないだろうと思っていた。
雄介が放出した液体を体に纏うようにして座席に倒れこんでいた私の耳に自然と電話での会話が入ってくる。
「……ん、そうか……分った。……あぁ、愛してるよ」
電話の向こうに誰がいるのか、容易に想像できた。
幾ら義務的に答える「愛してるよ」の言葉でも私は何だか胸が重苦しくなる。
電話を切り、私の方を向いた雄介が私に近づけてきた唇を私は手で防いだ。
「花梨……?」
「他の女に愛を伝えた後の唇で私の唇に触れないで……」
「……そうか。そうだな」
「ごめん、勝手を言ってるのは分っているの……でも……」
何故そんな事を言ったのか分からない。
奥様が居ると言う事は分かっていたこと。
承知の上で抱かれたはず。
でも、その温かさを肌で感じ、その熱を帯びた体がそれを忘れさせてしまっていた。
うろたえて、下を向く私の体を、雄介はギュッと抱き寄せて耳元で囁く。
「いや、今のは俺が悪かった……今度こそ送るよ……」
雄介は後ろに積んでいた着替えの服を着て、私にコートを渡した。
「お前の服は全部汚れたからな……それを着ろ」
「ん……ありがとう」
私はコートを羽織ながら、近くにあった紙袋に自分の服を入れ、ふと目に付いた雄介の脱ぎ捨てられた洋服を一緒にその紙袋に入れながら言う。
「コレは私が洗うわ……それくらいいいでしょ?」
「……そうだな……頼む」
雄介は運転席と後部座席の間にあった、カーテンを空け、運転席に座ってエンジンをかけ、車を寮へと走らせた。

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