疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

1人想う 1

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寮といっても、キチンとした寮があるわけではなく、会社が寮としてマンスリーのマンションの一室を借りている寮。
同じ会社の人に出会うことも無い。
そうは言うものの、会わないとも限らない為、寮となっているマンションの数百メートル手前で車を止めてもらった。
「本当にココで良いのか?」
「良いの……すぐだもん。ありがとう……」
「背広は……洗ったら花梨の部屋においておいてくれ。俺が取りに行く」
雄介の言葉は1つ1つ私を惑わせる。
取りに来る……それは、再び私と雄介が2人になる空間が出来上がると言う事。
その意味が分らないほど私も初心じゃない。
そのことが良い結果など生み出さないと言う事は良く分っていた。
でも、私は黙って頷く。
車のドアを開けて、道路に降り立ち、雄介の車が遠くに走り去るまでその場所で車を見送った。
大きなコートの中は一糸まとわぬ姿。
風が入り込んでスースーと寒い。
少し小走りでマンションまで帰って来て、自分の部屋に入ってホッとする。
やはり、裸で歩いている気分がして気が気じゃなかった。
鍵とチェーンを閉めて、部屋の窓をあけたりする前に真っ先にお風呂場へ向かう。
体には雄介の香りが染み付いて、綺麗にふき取れていない部分は乾ききっていて何だか気持ちが悪い。
洗面所に入って洗濯機の蓋を開けた。
紙袋を逆さにして洗濯機に服を放り込む。
雄介の背広があるが、愛し合った後が多数ついている状態でクリーニングに出すわけにも行かないので、とりあえず、自宅である程度、洗濯しておいてから明日にでもクリーニングに出す事にした。
一応、おしゃれ着洗いの洗剤をいれ、コースを選択した時、ふと、雄介の声が頭によぎる。
『ブラウスと下着は捨てろ……』
私は洗濯機から自分のブラウスと下着を取り出して、近くのゴミ箱に放り込んでから風呂場に向かった。

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