疑弟〜ギテイ〜

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

花梨の心 5

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(……布きれ一枚とか思ってたけど、あんなものでもなかったら心細くて寒いのね)
溜息をつきながら給湯室から更衣室に入って、急いで黒いタイツを穿く。
この会社の制服はスカートがとても短く、冷え性でもある私はタイツか少し厚手のストッキングを穿かないと制服なんて着ていられなかった。更衣室のロッカーには伝線した時用に5枚ほどストックしていたが、流石にパンティの換えもストックも置いていない。
それでも、何も穿いていない状態より、タイツを穿いたことで幾分マシになった。
ただ、肌にフィットするタイツは少し危険度があるということを穿いてみて実感する。
気をつけなければ丁度、股間にタイツの縫い目が食い込んでくるのだ。
(気をつけなくっちゃ……ただでさえ、誰かのせいで感じやすい体になっているんだもん……)
着替えを終えて、自分の席に行ってみれば、案の定、私の仕事はいつもより多かった。
「……やっぱりね、半日で帰っちゃったから仕事が大量だわ」
始業時間が来て、仕事が始まったが、部署が違うと言う事や、書庫で止めに入ったのが雄介だったということもあり、噂にもらならず、彼も私にかまおうとはしなかった。
とにかく仕事を片付ける為と、余り歩き回りたくないと言う事もあり、お昼ごはんもそこそこに、席について仕事をこなした。
午後になり、皆が帰って、会社の中には私しか居ないんじゃないかと言う静けさの中、残業もやっと目処が付き給湯室でコーヒーを飲んで休んでいた。
コーヒーを飲みながら私はチラリと流し台を見つめる。
朝、私の体はココで火照り、そして、今、私は下着を付けずにココにいるのだ。
カツンカツン……廊下に足音が響く。
(?。このフロアにはもう私しかいないはずなんだけど……)
私が少し潜める必要の無い息を潜めているとコンコンと給湯室のドアがノックされる。
「はい……雄介」
返事と同時に開いたドアから顔を出したのは雄介だった。
「花梨か、丁度良かった。コーヒー、ブラックで第8会議室まで持ってきてくれないか?」
「第8?」
「そう、じゃ、よろしく」
雄介はそれだけ言うとサッサとその場を後にし、私はまだ少し仕事が残っているのに……と少々不満をいだきながらもカップにコーヒーを、雄介の好みのコーヒーを作っていた。


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