くちづけ

<Sweet Orange Story

  Love 愛しき言霊>

嶺という男 10

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「私は私。誰のものでもないわ」
フッと、嶺の瞳に少し蔑む様な瞳を向けて言えば、嶺もまた、私を偉そうな目に映して口の端に笑みを浮かべる。
美形なだけに、その微笑みは何だか気持ちをゾクリとさせて、負けてその場に跪きそうになる。
でも、私はゼロ。強気で生意気、男を手玉に取る女で、どんな男だろうと屈しない。
その考えだけが今の私を支えているような、そんな感じで、私は強気な自分を保つのがやっとの状態。
それでも、それを嶺に悟られてしまっては意味が無い。この男、嶺にだけは負けたく無い。私は目に力をこめて嶺を見つめ返した。
「ずっとこうしてるつもり?」
「いや、そのつもりは無いが、お前次第だろう?」
「フン、言っとくけど私は譲る気は無いわよ。嶺が無理やりと言うのならココに私の死体が出来るだけ」
「フフ、そうだな、死なれては困る。では、今日は俺が譲ろう」
嶺はそういうと私の唇に舌をねじ入れ、私の唇を十分にしゃぶり尽くしてから洗面所のドアから出て行った。
ゆっくりと閉められたドアに近づき、鍵をかけてから私はびしょびしょに濡れた洋服を脱いで、ブルッと身を震わせる。
濡れたままでも寒かったのだが、濡れた服を脱いだ事で余計に寒くなったような気がして、急いで湯船に入り、シャワーの蛇口をひねった。
洗面所の2面は全てが鏡張りになっていて、湯船に入り、シャワーと対峙すれば右横と正面に私の姿が移りこむ。
鏡は鏡を反射させ、シャワーの温かさにピンク色になっていく私の肌を無数にその中に映し出した。
しかし、温かい雫はあっという間に広いお風呂場と洗面所を湯気で包み、鏡も曇って、私の視界も数センチ前が見えないほど真っ白な世界がそこに広がる。
「……雲の中ってこういう感じなのかしら?」
フッと息を吹けば揺れる湯気だったが、出口の無い密室でその存在は消えることなく底にとどまった。すぐに消え去らないその湯気がこの場所がそれだけ冷えていた事を物語り、良くこの寒い中、水を浴びたままの状態でクシャミ1つ出なかったものだと思い、それと同時に、クシャミが出なかった理由も私の頭に思い浮ぶ。
あらかたシャワーで全身を流した私は手探りで風呂桶に栓をして、シャワーで湯を張りながら風呂底に腰を下ろし、そっと、唇に手を触れれば、ビリッとしびれるような感覚が下唇に感じた。
鏡に近づいてみてみれば、下唇の一部に少し血がにじんでいる。
「唇を噛まれてたのか。気づかなかったわ」
そう、私は噛まれた事にすら気づかないほど、嶺に飲み込まれないようにと必死だったのだ。
「アイツ、ムカつくわ」
私に無理やり言う事をきかせようとするくせに、私の体が冷えないように全体を包み込んで抱きしめて、でも自分は私より上位に居ると印象付け、意地悪げに引き下がる。
私を娼婦だといったくせに、その扱いはまるで違う。どちらかといえば、今までの男達の方が私を娼婦として扱っていた。
体だけが欲しくて、自分の性欲だけを満たしたくて、金で私を……ううん、私の体を買っていた男たち。
私を満足させる事もできず、口だけの女のあえぎで満足していった男共。そうね、彼らの方がずっと【女を買った男】らしかった。
下唇に何度も指を滑らせて生まれる痛みが少し心地よく、体がビクリと反応する。
胸までお湯がたまれば辺りに漂っていた湯気も少し消え、蛇口を閉めて、ゆっくりと湯船に体を預け、少し視線を下げ自分の胸を見つめて驚いた。
これと言って何かをしたわけでもないのに、私の胸は何かを感じたようにその中心を硬く尖らせ、息継ぎをするかのように、お湯からその頭を突き出している。
「ま、まさか、私……ぁぅんっ!」
お湯から頭を出している胸の先を指で弾けば、放たれた快楽が全身を駆け巡った。
思わず飛び出た小さな喘ぎが風呂場に反響するのが分り、急いで口を手で押えた私だったが、その体に現れた欲情をどうにかして収めなければと右胸を持ち上げ、その先端を自らくわえ込み、空いている手は股間へと下りていく。
「ふぅん、ンッ、んぐっ」
自分自身で舐め上げる胸と蠢く指に刺激される股間の快楽に鼻から喘ぎの息が漏れ出すが、口は胸でふさがれているので嬌声が響くことなく、私は自分を慰めた。



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